市民マラソンで何度も優勝! エリート市民ランナーは看護師として患者さんに伴走中!

市民マラソンで何度も優勝! エリート市民ランナーは看護師として患者さんに伴走中!

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約24,000 ある郵便局をはじめ、全国で働く日本郵政グループの社員。この企画では、それぞれの立場で仕事に取り組む社員の姿勢と知られざるプライベートでの横顔、そんなオンとオフの両面で活躍する社員の魅力ある個性を掘り下げていきます。今回話を聞いたのは、東京逓信病院に勤務する鴈原 淳子(がんばら じゅんこ)さん。患者さんに寄り添い笑顔を絶やさない鴈原さんは、走って通勤する筋金入りのランニング好きで、レース覇者のエリートランナー。その活躍の様子とオンとオフの意外な共通点に迫ります。

鴈原 淳子(がんばら じゅんこ)さん

東京逓信病院 地域包括ケアチーム 副看護師長

鴈原 淳子(がんばら じゅんこ)さん

1998年東京逓信病院入職。一度退職したが2018年に復職。これまでに脳神経外科、泌尿器科、呼吸器内科、コロナ病棟などで経験を重ね、2024年2月から地域包括ケア病棟で勤務。同年4月より副看護師長を務める。

常に謙虚に、チーム一丸となって患者さんの在宅復帰を支援

――看護師になろうと思ったきっかけについて教えてください。

鴈原:幼いころ、看護師さんの制服を「素敵だな」と感じたことが一つのきっかけです。実は短大に進学して一度は一般企業への就職活動を始めたのですが、ちょうど就職氷河期だったこともあって、「手に職をつけて出直そう」と考え直したんです。そのときに幼少期の看護師さんへの憧れを思い出し、東京逓信病院高等看護学院(2007年3月閉校)に入学しました。

入学後、当院で実習をするなかで尊敬する看護師さんに出会い、運よくその方がいる病棟で働くことも決まってうれしかったですね。

朗らかな笑顔が印象的な鴈原さんの職場、東京都千代田区の東京逓信病院

――実習で尊敬できる方に巡り会えたのはすばらしいですね。どのような看護師さんだったのですか。

鴈原:患者さんと看護師という関係性を超え、人間対人間として向き合っていらした方です。いつも患者さんに寄り添いながら朗らかにお話しされていて、私もこうありたいと思いました。

――現在ご担当されている診療科と業務の内容を教えてください。

鴈原:2024年2月から、地域包括ケア病棟で勤務しています。地域包括ケア病棟は、手術や治療が終了した後、すぐにご自宅や施設に戻るのに不安のある患者さんの在宅復帰に向けた準備を整える場です。

そこで働く看護師は、在宅復帰支援計画に基づいて主治医・リハビリテーションスタッフ・医療ソーシャルワーカーなどと連携し、患者さんの退院準備を整え、安心してご自宅や施設にお戻りいただけるよう支援しています。4月からは副看護師長に就任したので、病棟で働く看護師20名ほどの管理業務にも奮闘中です。

――医療スタッフとのコミュニケーションで心がけていることはありますか。

鴈原:周囲に常に感謝の気持ちを持ち、憧れていた看護師さんのように、誰に対しても人間対人間でフラットに接することを大切にしています。いつも私を支えるのは「謙虚にして驕(おご)らず、さらに努力を」という、稲盛 和夫(いなもり かずお)氏(京セラ創業者)の言葉。仕事は、周囲の協力あってこそ進められることを忘れないようにしています。

それもあって、若手の看護師でも、心のモヤモヤなどささいな悩みなどが話せる、オープンな雰囲気づくりを心がけています。彼らはすごく大変なときでさえも健気に頑張るので、その姿に頼もしさを感じますが、とはいえ「大丈夫かな」と親心のように心配にはなりますよね。

――では、看護師としてのやりがいや、患者さんとのコミュニケーションでうれしかったことがあればお聞かせください。

鴈原:ありきたりですが、やはり患者さんが在宅復帰への自信を取り戻し、ご家族と笑顔で退院されるときはほっとします。先日、車いすで退院された患者さんとすれ違ったのですが、明るく声をかけてくださり、ご自分の足でしっかり歩かれていて感動しました。

先にお話ししたとおり、地域包括ケアは、主治医とご本人、ご家族、リハビリテーションスタッフや地域の訪問看護担当者などとの連携が必須です。チーム一丸となって目標に向かい、結果が実ったと感じられるとうれしいですね。

約20kmの通勤ランが、優勝できる走力の源!

――現在、市民ランナーとして大変なご活躍ですが、ランニングを始めたきっかけを教えてください。

鴈原:すごく単純で、ダイエットのためでした。3人目の子の出産後、なかなか体重が落ちず、血圧も高い状態が続き、これはマズイなと......。早朝のランニングなら家族の暮らしにも影響しないのではないかと考え、12年ほど前から走り始めました。もともと、中学・高校時代は陸上部で中長距離を走っていたので、スムーズに練習に取り組めたのかもしれません。

――不規則な勤務形態だと思いますが、普段の練習はどうされているのですか。

鴈原:日勤の日は、自宅から当院までの通勤で往復約20㎞を走ります。10㎞ほどのジョギングならあまり汗もかかず、勤務にもスムーズに入れます。休日は30㎞ほど走り、タイミングを見つけて地元のランニングクラブの練習会にも参加します。

ランニングクラブ「葛西ランナーズ」での練習風景。陸上に取り組む息子さんとともに走ることも

――通勤で約20㎞......、すごいとしか言葉が出ません。ランナーとしての活動に対し、ご家族やクラブの方から応援やサポートはありますか。

鴈原:クラブのメンバーは、いい結果が出たときはいっしょに喜んでくれ、悪いときも励ましながらアドバイスをくれます。走ることが大嫌いな夫は、ここ10年の私の変貌ぶりに多分引いていますが(笑)、会場まで送迎してくれるなどサポートしてくれています。

――これまで参加したレースで、特に印象に残っているものをお聞かせください。

鴈原:周囲の反響が大きく思い出深いレースと、自分のなかで印象に残っているレースの2つがあります。
前者は、2023年12月に開催されたNAHAマラソンです。非常に規模が大きく、歴史ある市民マラソン大会で優勝できたため、多くのメディアにも取り上げていただけました。

(写真提供 NAHAマラソン)

後者は、世界的にも有名な市民マラソンに出場したときで、2023年10月の金沢マラソンで出した2時間42分52秒の自己ベスト記録が評価され、念願のエリート選手として出場できたのでうれしさが心に刻まれています。

また、職場の皆さんが応援に来てくれたことで、より印象的な大会になりました。応援に駆けつけてくれた同僚の姿を見つけた瞬間、本当に幸せでしたし、レース後、「初めて沿道で応援してランナーの姿に感動した。楽しかった!」と感想を伝えてくれた方もいて、大会を楽しんでもらえたことが何よりうれしかったです。

同じ病棟で働く医師、薬剤師、看護師の皆さんが「キラキラうちわ」を振って応援してくれた光景は忘れられないと鴈原さん

――2024年2月の「さいたまマラソン」では、ナースウエア姿で走り、優勝されたそうですね。

鴈原:埼玉は故郷で、両親が応援に来てくれるので「楽しく走ろう」と、昭和の看護師風の仮装をしました。どんなレースでも絶対に手は抜きませんが、まさか優勝できるとは思っていなかったので自分でも驚きましたし、謎のナースが爆走していて、周囲のランナーや沿道の方も驚かせたかもしれません(笑)。

――取材の数日前も「かすみがうらマラソン」のチーム対抗レースで優勝されているんですね!

鴈原:そうなんです。普段はライバルでもあるランナーに声をかけてもらい、3人でチーム「最強のおばはん」を結成。優勝の副賞がアンコールワット国際ハーフマラソンへの派遣だったので、「優勝してカンボジアに行こう!」と気合いを入れて臨みました。結果が出てよかったです。

最近の戦績(すべて女性の部)。大小かかわらず、月1〜2ペースで大会に参加している

ランニングがハードワークを支え、仕事に向かう心持ちを穏やかに

――仕事とランニングを両立するうえで心がけていることはありますか。

鴈原:看護師もランナーも、自分の力を発揮するには体調管理が欠かせません。そのためにも睡眠をとても大切にしています。勤務が不規則なので、休みの日はお昼まで寝ていることも。そっと寝かせておいてくれるのも、家族の大きなサポートといえるのかもしれません(笑)。

――ランニングによる、仕事へのポジティブな影響はありますか。

鴈原:たくさんありますね。看護師の仕事は心身ともにしなやかで強くならなければ務まりません。コンスタントに走ることで、心の面では、前向きに仕事に臨めるようになりました。仕事中に心が沈むことが起きてしまっても、家まで走っているうちにすっきりして、「明日はまた頑張ろう」と、気持ちが切り替えられるようになった気がします。

それと、自分のなかにある負けん気や喜怒哀楽をレースで前面に出せるからか、仕事では周囲との調和を大切にして、イレギュラーが起きても穏やかでいられるようになったのは予想外のメリットでした。

身体の面では、体力・筋力がついたことはもちろん、整骨院などで定期的にメンテナンスしているため腰痛などもありません。今年50歳になりますが、患者さんの移乗介助も楽にできます。看護師として働き続けていられるのも、ランニングのおかげだと思います。

自己ベスト更新を目指しながら、メディカルランナーとしても活躍したい

――市民マラソンの魅力はどんなところだと思いますか。

鴈原:異なる目的や目標を持ったランナーたちが同じレースを走っている光景に、何より魅力を感じます。走ることで健康を維持したい、目標タイムを切りたい、完走したい人もいれば、私のように自己ベスト更新がベースにありながらも、ランナー仲間といっしょにレース後においしいビールを飲みたい!と言う人もいて。自分なりのゴールを目指して走り、それぞれの達成感を得られる点が市民マラソンの醍醐味だと思います。

――看護師と市民ランナー、それぞれ目標や夢を教えてください。

鴈原:現在は、院内で発生した心停止に対応できるスキルを持っていますが、院外でも自信を持って緊急処置ができるようなスキルの習得にも挑戦しているところです。今後はそれらを活かす形で、「メディカルランナー」として活躍したいという目標があります。

これから年齢を重ねれば徐々に走力は落ちてしまいますが、メディカルランナーとして大会をサポートしながら走ることができれば、ランナーとしても看護師としても冥利に尽きます。

純粋にランナーとしては、自己ベストを更新し続けたいですね。50代でも記録を伸ばしている方もいるので、「謙虚にして驕らず、さらに努力を」の言葉どおり、努力し続けたいと思います。

――仕事と趣味の両立を目指している方へ、メッセージをお願いします。

鴈原:私にとって真の意味での「オフ」は、ごはんをしっかり食べてよく眠ること。仕事もランニングも、互いをより充実させる「オン」なのだと思います。「どちらもオン!」と言えるような趣味を、それぞれで追い求めていけたらいいですね。

(写真提供 NAHAマラソン)
オン・オフ両立の極意

[東京逓信病院]
東京都千代田区富士見2-14-23
代表電話番号 03-5214-7111

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