「森を守る」年賀はがきが、できました

JP_ownd_fsc_01_211216_MYD.jpg

INDEX

すべての年賀はがきが、「FSC®認証紙」に!

JP_ownd_fsc_02_211216_MYD.jpg

古くは平安時代にはじまり、お正月の風物詩の一つとして親しまれてきた年賀状。現代の私たちにもなじみ深い「くじ付き年賀はがき」は、昭和24(1949)年に発売され、約70年もの間、新年のご挨拶に用いられてきました。さて、この日本郵便が発行する年賀はがき、2022年用からある変化が起きています。皆さん、お気づきでしょうか?

答えは、差出人の郵便番号枠の横に「FSC®認証マーク」が加わったこと。実は、2022年用年賀はがきから、すべての券種にFSC®認証紙が採用されたのです。

FSC®認証とは、適切に管理された森林と、そこから生産された林産物、再生資源、そのほかの管理された供給源からの原材料で作られた製品を識別する、国際的な森林認証制度のこと。FSC®認証を受けるには、豊かな自然環境を守り、悪影響を抑えるのはもちろんのこと、労働者の権利や安全の確保、地域社会との良好な関係の構築など、生産から加工・流通に至るすべての過程において、多様な視点から適切に管理されていることが求められます。FSC®認証紙を採用するということは、世界の森林の保全と持続可能な利用を促進することにつながるのです。

2022年用年賀はがきの当初発行枚数は18.3億枚。この膨大な量の紙がFSC®認証紙になったことは、とても大きな社会的インパクトだといえます。

FSCの原則と基準(責任ある森づくりのための世界的な取り組み)

FSC認証は、環境・社会・経済のバランスのとれた10の原則、70の基準に基づき、森林管理を審査・認証するFM認証と、林産物の加工・流通プロセスを対象とするCoC認証があり、独立した第三者機関が厳正な審査を行っている。

今、世界の森林で何が起きているの?

JP_ownd_fsc_05_211216_MYD.jpg

そもそも、世界の森林で起きている課題とは何でしょうか?

国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、2015~2020年の間に減少した森林面積は、平均で年間1,020万ヘクタール。これは2.2秒ごとにサッカー場一面分の森林が減少していることになるそうです。

私たちの日々の生活は、多様な生物とその住処である森林、水、空気といった自然資源や生態系の恩恵によって成り立っています。森林の減少は、水や土地の劣化、二酸化炭素の吸収量の減少や、生物多様性の減少などを引き起こし、私たちの生活や企業の成長に深刻な影響をもたらすとされています。

森林を守り、持続可能なかたちで利用することは、私たち自身の生活を守ることでもあるのです。2015年に国連で掲げられたSDGs(持続可能な開発目標)でも、「目標15」のなかで「森林の持続可能な経営」が掲げられています。

SDGsは、「貧困に終止符を打ち、持続可能な未来を追求する」ことを掲げ、国連総会で採択された世界共通の目標。2030年までに地球規模の課題を解決するべく、17の目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットが示されている。

担当者インタビュー 実現に3年! の開発秘話

膨大な数の発行枚数を誇り、全国の多くの人々の手にわたる年賀はがき。それをすべてFSC®認証紙に切り替えるのは簡単ではなかったはず。年賀はがきをFSC®認証紙に切り替えた背景にはどのような思いがあったのか、日本郵便株式会社 切手・葉書室の片岡 宏介(かたおか こうすけ)さんと土肥 功次郎(どい こうじろう)さんにお話を伺いました。

JP_ownd_fsc_07_211216_MYD.jpg
日本郵便株式会社 切手・葉書室 係長 片岡 宏介さん(写真左)
日本郵便株式会社 切手・葉書室 係長 土肥 功次郎さん(写真右)

――FSC®認証紙の採用に至った経緯について教えてください。

片岡:紙による通信をメイン事業に据える日本郵便は、これまでも環境配慮の観点から、年賀はがきに古紙を40%以上配合した再生紙を採用してきました。はがきはお客さまがお使いになるものですので、白色度が求められます。しかし古紙を配合すると、紙の色はグレーというか黄味がかった色になる。そこで、どうしても漂白という工程が必要になるのですが、漂白は環境に負荷がかかるというジレンマを抱えていました。

一方、FSC®認証紙は漂白なしで白色度の高いはがきを製造することが可能です。そして何より、SDGsなど社会全体のサステナビリティへの関心が高まっていることからも、これまでの環境配慮の取り組みからさらに一歩踏み込み、原材料がどこから来たのか、どのように調達されているのかまで目を向けたFSC®認証紙の採用に踏み切りました。

――実現に3年かかったそうですね。

片岡:FSC®認証紙は、調達先の森林までさかのぼった、厳しい基準をクリアした原材料の確保が必要になりますし、膨大な量の紙を使用するため、発行に至るまでに3年かかりました。

また、はがきは郵便局で区分機という機械にかけて、郵便番号ごとにお届け先を振り分けるのですが、紙質が変わると滑ったり機械の中で絡んだりして、はがきを棄損しかねません。原材料が変わっても仕様を満たすものを作れるかどうか、製紙会社と何度も試行錯誤を繰り返しました。

「年賀はがきを通じて、社員を含め多くの方にFSC®認証について知ってほしいという思いから、年賀はがきの包装紙や段ボールにもFSC®認証マークを記載しています」(土肥さん)

――FSC®認証紙の採用は、社会に大きな影響力を持つ日本郵政グループが、社会をサステナブルな方向へ変えていく方法の一つといえますね。

片岡:年賀はがきがFSC®認証紙になったことをきっかけに、FSC®認証や森林保護への関心が広がってほしいですね。私自身、FSC®認証紙の採用をきっかけに、SDGsへの関心が高まりました。「目標15」のほかに、どんな目標があるんだろうと調べたり。SDGsの目標の一つに「教育」もあり、私たちが取り組んでいる「手紙の書き方体験授業」などの取り組みも、SDGsに結びついていることを知りました。

土肥:特に若い方は、紙の年賀状に触れる機会が少なくなっていると聞きます。後で見返したり、ふと眺めたりもできる現物感やあたたかみは、紙の年賀状ならではだと思います。年賀はがきがFSC®認証紙になったことをきっかけに、サステナビリティに関心の高い若い方たちが、紙の年賀状に興味を持ってくれたらうれしいですね。

現在、通常のはがきについてもFSC®認証紙への切り替えが進んでおり、早ければ2022年から市場に出回りはじめるそう。ぜひお手元の年賀はがきや通常はがきで、FSC®認証マークを探してみてくださいね。

※撮影時のみマスクを外しています

日本郵政グループのサステナビリティ最前線 連載記事一覧はこちら

            

#HOT TAG

カテゴリ

おすすめ記事