子どもの創造力は無限大! 約半世紀続く「ゆうちょアイデア貯金箱コンクール」
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株式会社ゆうちょ銀行が次世代育成として開催している「ゆうちょアイデア貯金箱コンクール」。昨年は全国の約半数の小学校から約48万人の小学生が参加するなど、夏休みの工作課題の定番として広く知られています。来年は第50回を迎える歴史あるコンクールについて、担当者である広報部の原田 菜生(はらだ なお)さんと佐藤 七海(さとう ななみ)さんにお話を伺いました。
株式会社ゆうちょ銀行 広報部 主任
原田 菜生(はらだ なお)さん
2018年、株式会社ゆうちょ銀行に入社。金沢支店で窓口業務などに携わった後、2020年から広報部に配属となり、主に企業広告や金融教育施策を担当している。
株式会社ゆうちょ銀行 広報部 主任
佐藤 七海(さとう ななみ)さん
2019年、株式会社ゆうちょ銀行に入社。横浜店と藤沢店での勤務を経て、2021年に広報部へ異動。貯金箱コンクールを中心に、CSR関連の業務を担当。
全国の小学校の約半数が応募する、日本最大規模の工作コンクール
――「ゆうちょアイデア貯金箱コンクール」は、小学校の夏休みの工作課題として親しまれていますよね。
佐藤:例年、全国の小学校の約半数から応募いただいています。昨年度は8,685校から約48万点の作品が寄せられました。小学生を対象としたコンクールはさまざまありますが、造形のコンクールは珍しくて、特に先生方から「この先もずっと続けてほしい」という声を多くいただいています。
――小学校の約半数とは、すごい数ですね。コンクールの目的を教えてください。
原田:まずは、子どもたちの造形的な創造力を伸ばすこと。そして、貯蓄に対して小さいころから関心を持ってもらうことを目的としています。子どもたちが自分の手で貯金箱を作ることにより、正しいお金の使い方を学ぶ最初のきっかけを見つけてもらえたらうれしいです。
また、応募いただいた作品1点につき10円の寄付も行っています。昨年度は総額484万7,570円(文房具2万点を含む)を、ゆうちょ銀行から公益財団法人日本ユニセフ協会、独立行政法人国際協力機構(JICA)、公益財団法人ジョイセフへ寄付し、開発途上国・地域における生活向上や環境保全、教育のための活動支援に役立てられています。
――コンクールはいつごろから始まったのでしょうか?
佐藤:郵便貯金の創業100周年を記念して、1975年より始まりました。今年で49回目の開催となり、来年はいよいよ50回目を迎えます。おおよそ半世紀にわたって、小学校における工作課題の定番として親しまれてきました。
――長い歴史があるんですね。応募から選考まではどのように行われるのですか?
佐藤:応募方法は2通りあります。従来の学校応募に加え、2021年(第46回)より学校を通さずご家庭から直接応募いただける個人応募もスタートしました。学校応募では、学年別に学校代表を2作品選出していただき、一次審査へと進みます。
一次審査は作品の写真で行い、240作品まで絞り込みます。ここで選ばれた240作品はすべて入賞作品となり、次に現物による最終審査が行われます。最終審査は東京藝術大学の教授や美術館の館長、文部科学省の方々などに審査していただきます。
その後、子どもたちへ最終結果をお知らせして、12月末から全国数カ所を巡回しながら入賞作品の展示会を開催しています。
佐藤:展示会では、貯金箱を実際に触って楽しんでもらえるように、入賞作品のなかから一つを選んでレプリカを作っています。レプリカは壊れないように丈夫な素材を用いて作るのですが、それでもやはり子どもたちがいろいろな触り方をするので、結構壊れてしまうんです。実は裏ではスタッフが修復作業を頑張っています(笑)。
自由な発想、驚きのアイデアが勢ぞろい
――どんな作品が応募されてくるのですか?
原田:大人がちょっと考えつかないような、子どもの豊かな視点で 作られた作品が多いですね。テーマを考えてから作品や材料を決めると思いきや、家にあった材料をきっかけにテーマを決める子どもも結構いて、発想の順番が面白いと思います。個人的に好きなのは、アイスの棒で作った作品。いっぱい食べたんだなって、微笑ましかったですね(笑)。
――入賞作品のなかで特に印象的だった作品を教えてください。
原田:たくさんあるのですが、なかでも印象的だったのが、第46回の文部科学大臣賞を受賞したウミガメの作品です。トリックアートの本で見た「宙に浮いて見える手法」を使ったそうなのですが、見れば見るほど不思議で、本当にウミガメが宙に浮いているように見える驚きの作品でした。
原田:第48回に入賞した「日本一しゅうりょ行(日本一周旅行)に行こう」という作品も心に残っています。この方は、「作品が展示会で日本各地をまわるなら、自分も日本を半周したい!」と言って、実際に展示会3カ所に足を運んでくださり、日本半周旅行をされていました。まさにタイトルのようで、よい思い出になってくれていたら幸せです。
佐藤:夢や好きなものを形にしてくれている子どもが多いので、そういう作品に触れていると自分も童心にかえった気分でワクワクします。貯金は好きなことのためにお金を貯めるという意味もあるので、作品を作りながら貯金箱に夢を託してくれたらうれしいです。
――繊細な作品が多そうですね。どのように運搬しているのでしょうか?
原田:そうなんですよ、本当に繊細な作品が多くて。ですから、コンクール専用の運搬キットをご用意しています。作品は25cm四方以内というサイズ規定があるので、それが入るような緩衝材入りの箱をあらかじめ全国の小学校へ配布しています。
入賞作品は展示会巡回による運搬もあるので、あまりにも壊れやすいものはやめてくださいとお伝えしています。あと、ナマものとか長期保存ができない素材を使った作品も受け付けできませんので、ご留意いただければと思います。
「ゆうちょアイデア貯金箱コンクール」に参加した学校関係者の皆さんからのコメント
"アイデア"というキーワードがとてもよいと思います。作品の工夫を紹介し合う時間を持ち、友だちの作品に関心を持つことができました。夏休みの課題にピッタリです
ユニークな作品が多く、児童のいきいきとした力を感じるものが多数で、すばらしいと思っています
貯金箱という題材が子どもたちにとって取り組みやすく、参加賞をいただけることも楽しみで、課題に選ぶ子が多いです
工作で応募できて参加賞がいただけるコンクールは少ないので、続けてほしいです
子供の意欲を刺激する企画、そして受賞作品の数々、とても楽しんで作っているようです
未来を担う子どもたちへ、コンクールを通して託す想い
――お二人の話を伺っていると、コンクールに携わる業務は、とても楽しそうですね。
原田:はい、楽しいです! 純粋な子どもたちの作品に触れる喜びもありますし、芸術関係の方とお話をするのもとても勉強になります。審査員によって作品を見る視点がさまざまなのも面白いですね。でも、皆さん共通して、子どもが子どもらしく、伸び伸び作った素朴な作品がいいよねって話していますね。
――コンクールを通して、子どもたちへ伝えたいことをお聞かせください。
原田:子どもたちには、コンクールを通じて目の前のことに集中し、楽しんで何かをやり遂げる力を付けてほしいです。貯金箱を作るなかで、一筋縄ではいかない部分が出てくると思うんです。そんなとき、「こうすればできるんじゃないか」という発想力やご家族のアドバイスなどを活かしながら、実際に完成させるのが、成長における大きなステップになるのではないでしょうか。
――本年度、第49回コンクール開催に向けた意気込みはありますか?
佐藤:来年は第50回となり半世紀を迎えますが、この先も長く続いていくコンクールになってほしいと思っています。ですから、より多くの方に知ってもらいたいですね。まだ個人応募のことはあまり知られていないので、学校を通さなくても応募できるということをどんどん広めていきたいですね。
――今後はどのような活動をしていきたいですか?
原田:広報部では、金融教育という業務を行っています。今回のコンクールも金融教育の一環として実施しているのですが、近年のキャッシュレス化に伴い、お金のトラブルが増えている現状があります。
次世代の子どもたちに正しいお金の使い方を伝え、トラブルを防いでいけるよう、ゆうちょ銀行社員としてできることを続けていきたいです。
佐藤:コンクールや金融教育などの次世代教育は、ゆうちょ銀行のネットワークが全国の地域に根付いているからこそ推進できるものだと思います。その強みを活かして、今後もゆうちょ銀行ならではのアプローチを模索しながら、業務に邁進(まいしん)していきます。