年間60tのCO2を削減!水素を燃料とした燃料電池小型トラックが実現するエコな輸送

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政府が「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表したことを受け、日本郵政グループでは、温室効果ガス排出量の削減目標(「2050年カーボンニュートラル」の実現、その中間目標として2030年度までに46%削減(対2019年度比))を掲げています。カーボンニュートラルに向けた取り組みの一環として、日本郵便株式会社と日本郵便輸送株式会社は、2023年11月より、水素を燃料とした燃料電池小型トラック(以下、FC小型トラック)を、東京都内の郵便局間における郵便物などの運送業務に導入しています。

この取り組みの成果や意義について、導入にかかわった日本郵便株式会社 郵便・物流ネットワーク部の定森 拓海(さだもり たくみ)さん、日本郵便輸送株式会社 業務部の益永 雄介(ますなが ゆうすけ)さんにお話を伺いました。

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日本郵便株式会社 郵便・物流ネットワーク部 主任

定森 拓海(さだもり たくみ)さん

2017年、日本郵便株式会社に入社。杉並郵便局での勤務を経て、九州支社の郵便・物流オペレーション部に配属。その後、本社へ異動となり、輸送部などを経て、現職。

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日本郵便輸送株式会社 業務部 課長

益永 雄介(ますなが ゆうすけ)さん

2010年、日本郵便輸送株式会社に入社。四国支社や中国支社で勤務したのち、2023年7月から現職。

商用領域におけるFC小型トラック導入の実証実験に参加

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――FC小型トラックの導入において、お二人はどのような役割を担当されましたか。

定森:今回の取り組みは日本郵便や日本郵便輸送など、日本郵政グループ単独で進めているものではなく、自動車メーカーや小売、物流事業者など、さまざまな企業がコンソーシアムを組んで取り組んでいるプロジェクトとなります。また、国の機関から助成金をいただいて実施しているものでもありますので、私の業務としては、関係各社との連携や、助成金手続きの窓口など、導入を進めるにあたっての調整役を担いました。

益永:私の所属している日本郵便輸送では、郵便局間の郵便物運送を引き受けています。今回のFC小型トラックの導入においては、定森さんと連携しながら、実際に走行するコースを検討したり、トラックの納車時期を決めたりと、現場レベルでの調整を担当しました。

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――FC小型トラックを導入することになった経緯を教えていただけますか。

定森:3年ほど前に、コンソーシアムの幹事会社にお話をいただいたのがきっかけです。商用領域における燃料電池自動車(以下、FCEV)や電気自動車(以下、BEV)の社会実装を進めていきたいという話が幹事会社のなかであり、その導入先として、われわれ日本郵政グループにお声がけいただきました。日本郵政グループとしても、「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げているので、大きな意義のある取り組みだと思い、今回の実証実験に参加させていただくことになりました。

走行時のCO2排出量はゼロ! 概算でCO2を年間60 t削減

――FCEVはどういった仕組みで動くのでしょうか。BEVとは違うものですか

定森:電力でモーターを動かすという点においてはBEVと仕組みは同じです。ただ、BEVは外部から供給される電力をバッテリーに充電してモーターの動力源にしていますが、FCEVは自ら発電をして走行するという点に違いがあり、その燃料に水素を用いているのが特徴です。車両に搭載されたタンクに水素を充填し、走行時は燃料電池(水素と酸素の化学反応でエネルギーを得る電池)の発電で得られた電力でモーターを動かします。

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●FC小型トラック車両仕様

最大積載量 2,950㎏
航続距離 約260km
最高速度 時速80km
水素貯蔵量 約10㎏

――FC小型トラックのメリットはなんでしょうか。

定森:最大のメリットは、やはり走行時のCO2排出量がゼロというところです。

――今回、FC小型トラックを導入したことによって、具体的には年間にどれくらいの量のCO2を削減できるのでしょうか。

定森:概算的な数値となりますが、ディーゼル車では1台あたり年間で約12 tのCO2を排出する計算です。現在、5台のFC小型トラックを稼働させているので、年間で約60 tのCO2を削減できます。

――CO2削減以外にもメリットはありますか。

益永:FC小型トラックのメリットをさらに挙げますと、まず走行音が静かであるということ。また、実際に運転したドライバーからは、「ディーゼル車と比べるとパワーが劣るのではないかと危惧していたが、発進がスムーズで驚いた」といった声も聞かれました。

――BEVと比べたときの優位性はなんでしょうか。

益永:航続距離が長いというのが一つあると思います。われわれとしてはトラックの航続距離が長いほど、輸送でカバーできるエリアも広がりますので、これは大きな優位性となります。また、BEVと比べてエネルギーの補給時間が短いというのもメリットです。

――逆に、現状の課題はありますか。

益永:主には、FCEV自体の普及がまだ進んでいないこともあって、車両価格がとても高いという点が挙げられます。そして、水素の燃料代も高くなっているので、コスト面での課題は大きいです。

また、インフラ整備という面では、水素を充填する水素ステーションの数が東京都内でも21カ所(2024年4月現在)と少なく、今後のさらなる拡充が望まれます。水素の充填で順番待ちが発生するような状況を避けるため、比較的空いている時間帯を水素ステーションに確認したうえで、運行計画を決めています。

ますます必要とされていく環境に配慮した輸送。今後は大型車の導入も進めたい

――導入を進めるにあたり、こだわったところはありますか。

定森:今回の取り組みは、日本郵政グループがカーボンニュートラルに取り組んでいることをアピールする絶好の機会であるとも捉えています。そこで、一般の方にも走行中のトラックに気づいてもらいたいという想いで、トラックの車体に郵便局のキャラクターである「ぽすくま」のステッカーを貼ることにしました。

当初は、既存のイラストを使用することも考えていたのですが、せっかくの機会なので工夫を凝らしてぽすくまが水素を抱いているようなデザインにしてみました。このような仕事は不慣れでもありましたが(笑)、とても新鮮で楽しかったです。

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益永:定森さんと同じで、せっかくやるんだから、多くの人にこの取り組みを知ってもらいたいという想いが私にもありました。そこでトラックの走行ルートも、日中はなるべく人目につきやすいようなエリアとなるよう、支社・営業所と調整をしながら選定しました。実際、導入後に知人から「あのトラック見たよ」と言っていただくこともあり、とてもうれしかったです。

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――そのほかに、FC小型トラックを導入して反響などはありましたか。

定森:カーボンニュートラルな輸送を活用してみたいという企業や、水素ステーションの誘致を検討されている自治体などから、どういう取り組みなのか知りたい、といったお問い合わせをいただいています。FCトラック自体がまだ希少ということもあると思いますが、それだけ社会的関心が高い取り組みなのだとも感じています。

――取り組みへの振り返りと、今後の展望を教えてください。

定森:まず、現在の取り組みに関しては、FC小型トラックを導入してから1年近くが経ちますが、オペレーション面ではスムーズな運用ができていると思います。今後は、東京都内の輸送だけでなく、幹線輸送における大型車の導入も計画しています。

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――最後にあらためて、日本郵政グループがFC小型トラックの導入に取り組む意義を教えてください。

定森:日本郵政グループとして「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指しているので、そこにつながる取り組みであり、社会情勢を鑑みても、カーボンニュートラルな輸送に対する需要は今後ますます高まっていくものだと思っています。今回の実証実験は、社会のニーズに応えグループの成長に貢献していくものと考えていますし、そのような未来につながるよう引き続き導入に向けた検討を進めていきます。

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