私のオンとオフ スイッチインタビュー 安芸市から世界へ!ベンチプレス世界大会のメダリストが仕事でもプロフェッショナリズムを発揮できる理由

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約24,000ある郵便局をはじめ、全国で働く日本郵政グループの社員。この企画では、それぞれの立場で仕事に取り組む社員の姿勢と知られざるプライベートでの横顔、そんなオンとオフの両面で活躍する社員の魅力ある個性を掘り下げていきます。今回、お話を聞いたのは、高知県にある安芸郵便局で勤務しながら、ベンチプレスの選手としても活躍、世界大会で金メダルの獲得経験もある小松 麻実(こまつ まみ)さん。優しい表情の裏に隠された「勝つ」ことへの情熱や、オンとオフ両立のヒントについて伺いました。

安芸郵便局
小松 麻実(こまつ まみ)さん
1999年、郵政省(当時)に非常勤職員として入省。2010年、正社員に登用。勤務地は一貫して安芸郵便局。荷物などの配達業務を主に担当している。
配達は安全第一、地域の模範になる立場として運転は慎重に

――長年、安芸郵便局に勤められているそうですが、安芸市はどのような地域ですか。
小松:とてもいいところだと思います。私は生まれも育ちも安芸市なんですよ。自然が豊かで、食べ物もおいしいですね。名産としては土佐文旦やナスが知られています。特に「冬春ナス」の生産量は全国トップクラスです。

――郵便局ではどのような業務をされているのですか。
小松:ゆうパックなどを配達するのがメインの業務で、そのほかに営業的な仕事もしています。
――仕事をするうえで、意識していること、気をつけていることはありますか。

小松:配達では集配用の自動車を運転するので、やはり安全を第一に意識しています。また、安芸市から交通安全指導員の委嘱を受けているので、皆さんの模範にならなければいけない立場でもあります。そのため、配達するときは一層、気を引きしめて運転をしています。
ベンチプレス歴16年目にして、世界大会で初めてメダルを獲得

――小松さんが長年取り組まれているベンチプレスとは、どういう競技ですか。
小松:スクワット、ベンチプレス、デッドリフトと、3種目ある「パワーリフティング」のなかで、ベンチプレスだけを独立して競技化したものになります。特徴としては、スクワットとデッドリフトが立ちながら実施する競技なのに対して、ベンチプレスはベンチ台に横になり、胸の上でバーベルを持ち上げる競技です。足の不自由な方も取り組めるので、パラリンピックの競技にも採用されています。

――なぜベンチプレスをやってみようと思ったのでしょうか。
小松:警察署で大人の方も参加可能な少年柔道クラブの指導役を務めているのですが、あるとき、教え子のお友だちがベンチプレスの競技をしているということで、「興味があったら大会に参加してみませんか?」と誘われたんです。ベンチプレスは柔道の補助トレーニングとして親しんでいたので、やってみようかなと思ったのがきっかけでした。
――大会にはどのような種類があるのですか。
小松:大きく分けて、県大会、地方大会、全国大会、世界大会の4つがあります。県大会と地方大会は誰でも自由に参加することができますが、全国大会は自分の階級の標準記録(※)をクリアしていなければ出場することはできません。さらに世界大会は、その全国大会で(階級ごとに)1位となった人のみが出場できます。
※ 全国規模の競技会に出場するために必要となる記録。

――まさに選ばれた人のみが世界大会に進出できるのですね。
小松:私も世界大会には2012年に初めて出場し、2014年からはコロナ禍で大会のなかった期間(2020年~2022年)を除いて毎年出場しています。


――すごいですね。これまでの世界大会で、特に思い出深いことを教えてください。
小松:2014年から、選手として所属している有光自動車さんを中心に資金面でご支援をいただけるようになったのですが、その年は目標としていたメダルを獲得できず、とても苦しい思いをしました。期待に応えなければという強い思いがあったので、2015年のアメリカ大会で初めて銀メダルを獲得できたときは、やっと恩返しができたという思いがあふれ、本当にうれしかったですね。

――競技としてのベンチプレスの魅力はどのようなところでしょうか。
小松:筋トレの延長にある競技なので、誰でも挑戦しやすいというのが一つ魅力としてあると思います。あと、成長を実感しやすいというのも魅力かもしれませんね。トレーニングをすればするほど持ち上げられる重量がどんどん上がっていきますし、体つきも、特に男性はわかりやすく変わっていきますので、すごく楽しめる競技だと思います。

時間があればトレーニング、最大の原動力は「負けず嫌い」
――ベンチプレスのトレーニングは、日々相当されているのでしょうか。
小松:毎日、何かしらはしていますね。仕事終わりに自宅でトレーニングをしたり、大会に向けて減量するときは、朝4時に起きてヒートトレーニング(短時間集中型のトレーニング)をしたり。高重量のトレーニングをしたいときは、設備の整った地元の体育館にあるジムに行っています。休みの日も欠かさず筋トレを行っていますし、週2回、少年柔道クラブで指導をしているので、それもよいトレーニングになっていますね。
――とてもお忙しそうですが、郵便局の仕事との両立は難しくないですか?
小松:そうですね。特に毎年12月はお歳暮などの配達でとても忙しくなりますが、2月の全国大会に向けたトレーニング期間と重なって、練習時間の確保がとても難しくなります。ですが、休みの日も全力で練習をして、仕事とトレーニングのどちらもおろそかにならないように過ごしています。
――なぜ、そこまで頑張れるのでしょうか。
小松:私、雰囲気からして穏やかな人かなと思われることも多いのですが(笑)、こう見えて大の「負けず嫌い」なんです。ベンチプレスの大会も、メダルの色一つ違うだけでも大違い、絶対に金メダルを取りたいですし、仕事も同様で常に全力を注ぎたいと思っています。ベンチプレスと仕事を両立する大変さは競技を始めたころからわかっていたことなので、やるしかないと思って前向きに取り組んでいます。

――オンとオフの両立で、相乗効果が生まれたことはありますか?
小松:ベンチプレスの活動をメディアで取り上げていただく機会が多いのですが、そこから私の存在を知っていただいて生まれたご縁もあります。そうした人とのつながりが、郵便局の仕事にもすごく役立っていますね。例えば、営業活動の際にお相手が私のことを知っている方だったおかげで、商談をスムーズに進められたことも多々あります。
仕事もベンチプレスも、指導者として後進育成の立場に!
――お仕事とベンチプレス、それぞれの今後の目標を教えていただけますか。
小松:どちらも後進のためにできることを考えています。例えば、仕事面で私が最近意識して行っていることは、後輩への声かけです。社員のメンタルヘルスケアは、今どこの職場でも重要視されていることだと思いますが、私も職場で年次が上の方になってきているので、何かあったときに相談できる、頼れる存在でありたいと思っています。「何か困ってない?」「話、聞くよ」という声かけを積極的にしています。

――声をかけてもらえるだけでも安心できますよね。
小松:はい。それから、筋トレはストレスの発散につながるということで、局長に提案して、2023年に同じ郵便局で働く仲間でベンチプレスのチームを作っていただきました。このチームではコーチのような立場で指導を担当しており、チームメンバーの自己記録更新を期待しています。


――ベンチプレスの経験が仕事に活きているんですね。ベンチプレスでの目標は何でしょうか。
小松:実は、現在、高知県パワーリフティング協会の副理事長を務めているんです。県内のジムでの指導や新しい人材の発掘に取り組んでおり、後進育成に全力を注ぎたいです。また、60歳を迎える5年後に世界大会に出場し、優勝して有終の美を飾りたいです。

――オン・オフ両方の取り組みを通し、今後どのように過ごしていきたいですか。

小松:郵便局の仕事も、ベンチプレスも、どちらもおろそかにすることなく、長く取り組んでいきたいですね。同じことを長く続けるメリットって、やはり後輩たちの成長する姿を見られることだと思うんです。5年後、10年後と、自分自身どうなっているのか想像がつきませんが、後輩たちが元気に活躍する姿を見届けたい、というのが私の願いです。


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