アスリートの「日常」 日本郵政グループ女子陸上部
「手紙を運ぶ郵便」と「たすきをつなぐ駅伝」。
その親和性の強さから、日本郵政グループ女子陸上部は結成されました。
「己との戦い」と「チームとしての戦い」。
どちらも欠かせない駅伝という、過酷な戦場に挑む彼女たち。
数々の雄姿も、記憶に新しいところです。
そんな彼女たちは、普段どんな「日常」を紡いでいるのでしょうか。
この企画は、彼女たちが戦いで見せる姿とはまた違ったありのままの姿を写真に切り取り、お届けするサイドストーリーです。
日本郵政グループ女子陸上部は、日本郵政グループ創業以来初となる実業団チームです。
創部したのは、2014年の春。翌年2015年に実業団女子駅伝日本一をかけて行われる「全日本実業団対抗女子駅伝競走大会(クイーンズ駅伝)」に初出場。そして2016年には、なんと初優勝を飾ります。
創部から、わずか3年目にして異例の快挙。
その後も連続出場を果たし、2019年、2020年には二連覇を成し遂げました。
チームへの注目と期待が一気に集まるなか、それらに応えながら現在まで数々の実績を積み上げています。2021年に開催された東京五輪への出場選手も輩出しており、その雄姿をご覧になった方もいるのではないでしょうか。
コースをさっそうと駆け抜ける姿ばかりが印象的ですが、今回は初公開となる選手寮を訪問し、彼女たちの日常に迫ります。
選手たちの「日常」を語るうえで欠かせない、毎日の練習風景
ということで、彼女たちの選手寮である「小金井寮」にやってきました。
女子陸上部の選手たちは、基本的にこの場所で寝食を共にし、日々の練習に励んでいます。
寮を訪ねると、ちょうど選手たちがトレーニングをはじめるタイミングに遭遇! 練習前のミーティングをしていました。寮内には、器具や設備の整った専用のトレーニングルームが完備されています。
本日は、本来なら屋外練習の予定でしたが、急きょ屋内で実施することに。日々刻々と変わる選手たちのコンディションを考慮して、練習内容もフレキシブルに調整しているそうです。
練習は主に早朝からの朝練習と、勤務後に行う午後練習やトレーニングがあります。
選手たちも、れっきとした日本郵政グループの社員。早朝練習後の午前中は出勤し、業務に従事しているのです。
ちなみに、この日のメニューはこちら。
複数の種目を短時間で周回していく、サーキットトレーニングになります。今回は、この12種目ですね。
トレーニングに集中する選手たちの表情は真剣そのもの。つい、見とれてしまいそうです。
共用部の廊下部分まで使ってトレーニングしていました。こちらは「1人手押し車」という種目。
壁に張られた鏡ではフォームなどを確認。コーチ陣の手厚いサポートを受けながら、流れるようにメニューをこなしていきます。
トレーニング中、キリッと引き締まった表情を見せる彼女たちでしたが......。
その合間には、選手同士で談笑するシーンも。笑顔で話す姿に、日ごろの仲のよさが伝わってきました。
選手とコーチとの間のコミュニケーションも活発。陸上やトレーニングに関することを話しながらも時折笑顔を見せており、強い信頼関係が感じられました。
トレーニングには、水分補給も欠かせません。こちらは、実にバリエーション豊かな選手愛用のドリンクたち。中身を記したテープが貼ってある親切設計です。
真剣に、しかし時に楽しみながら、本日のメニューをきっちりやり遂げていた選手たち。また、練習風景やチーム内でのやり取りの様子からは、結束力の強さも感じました。
過酷なレースを走り抜くフィジカルは、このような日々の研さんのうえに成り立っているのですね。
小金井寮に感じる、選手たちの暮らしの風景
ここまで、選手たちの練習・トレーニング風景をのぞいてきました。
そしてここからは、選手たちが送る日々の生活を感じるような寮内のシーンを紹介していきます。
寮の玄関へ続く駐輪場には、たくさんの自転車が止まっていました。
きっと、日常のあらゆる場面で活躍しているのでしょう。
この日は天気がよく、日ざしを受けて色とりどりの車体が美しく輝いていました。大事に使われていることが見て取れます。
玄関を抜けて室内に入ると、すぐ右手にあるトロフィールームが目に飛び込んできます。
今年の春は、創部から9年目を迎える年。比較的若い実業団チームですが、そうは思えないほど数多くの実績を積み上げてきたことを実感させられる一角です。
表彰状やトロフィー、メンバーの写真など......。一つ一つの実績が、大切に保管されています。
こちらのトロフィーは、2016年の「全日本実業団対抗女子駅伝競走大会(クイーンズ駅伝)」にて、初優勝を成し遂げたときのもの。
これまでのレースにおける、名シーンの写真もたくさん。
選手を勇気づけ、鼓舞してくれる場所なのでしょう。
彼女たちの歩んできた確かな歴史が、ここには詰まっていました。
食べるものが体を作る、といっても過言ではないほど、体作りにとって重要な「食」。それを司るのが、寮の食堂です。専属の管理栄養士が考案したメニューが、ここで選手たちに提供されます。
そして同時に、ここは選手同士のコミュニケーションの場にもなっているそうです。
献立は週ごとに決められ、食堂内にあるホワイトボードに書き出されていました。選手たちにも、多かれ少なかれ好き嫌いくらいはある......かもしれないので、献立を見て一喜一憂したりするのでしょうか。
電子レンジに貼ってあった、かわいらしいメモ書き。こういうささやかな暮らしの断片のようなものを見つけると、一気に親しみが湧くのは私だけではないはず。ブレーカー、落ちちゃうのかな。
スケジュールボードも、選手たちが集う食堂に設置されています。ふと、その上に書かれたチームスローガンに目が留まりました。個人競技の印象が強い陸上競技ですが、チーム内で高め合うことが、個人種目でも駅伝でも結果を残す秘訣なのでしょうか。
食堂は日当たりがとてもよく、そこかしこに温かな日だまりができていました。気持ちがしゃんとして前向きになるような、リラックスして自然体でいられるような、素敵な場所でした。
帰りがけに改めて立ち寄った、美しい陽光がさし込むトレーニングルーム。誰もいない静かな室内は、トレーニング時とは全然違った表情を見せます。
これはケトルベルと言って、主に筋力トレーニングに使われる器具です。
トラックを彷彿とさせる、陸上競技らしい床面のマーキング。
鮮やかなカラーリングのバランスボール。
シャッターを切りながら室内を眺めていると、選手やコーチたちの快活な声が、頭のなかによみがえるような気がしました。
選手寮が完成したのは、創部の翌年にあたる2015年。以来選手たちの成長を、この穏やかな日ざしのように温かく見守り続けています。
たすきをつなぎ、想いをつなぐその姿がたくさんの人々に勇気を与えてきた、日本郵政グループ女子陸上部。今回は、駅伝や大会などの表舞台ではない、いわば舞台裏の一部分をお届けしました。
一見すると超人のようでもあるアスリートですが、日々の暮らしのなかにかいま見える何気ない一面にはグッと親しみが湧きます。
レースのときとはまた違う彼女たちの新たな魅力を実感しながら、「小金井寮」を後にしました。
フォトグラファー:武井 宏員
ライター:HARU
企画・制作:CURBON