みらいの郵便局、始動! Vol.2 大手町郵便局を日本郵政グループが一つになって作り上げる「みらいの郵便局」の拠点に。
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2021年7月に誕生した株式会社JPデジタルでは、リアルの郵便局ネットワークとデジタルとを融合する「みらいの郵便局」に向けたさまざまな取り組みを始めています。その一つとして、2022年4月から、大手町郵便局をDX実証実験郵便局とし、日本郵政グループ一体でともに作り上げるためのプロジェクトが始動。今回は、JPデジタルCEO飯田さん、COO大角さん、プロジェクト中心メンバーの引地さん、岡田さんに、プロジェクトの概要やそこにかける想い、今後の展望について伺いました。
・株式会社JPデジタル 代表取締役社長CEO(兼 日本郵政株式会社 執行役(DX推進室担当)
飯田 恭久(いいだ やすひさ)さん
米国留学後、1992年、ジレット・ジャパン社に入社。1999年にウォルト・ディズニー・インターナショナル・ジャパン株式会社を経て、2002年より英国ダイソンの日本法人であるダイソン株式会社にて代表取締役を務めた後、楽天グループ株式会社に入社。米国を拠点に楽天の国際化を推進。2021年4月から日本郵政の執行役に、同年7月からJPデジタルのCEOに就任。現在、日本郵政グループのグループCDOも兼任している。
・株式会社JPデジタル COO(兼 日本郵政株式会社 DX推進室長)
大角 聡さん(おおがく さとる)さん
1996年、郵政省に入省。郵政事業庁、日本郵政公社での勤務を経て、2007年の郵政民営化に伴い誕生した日本郵政グループで経営企画を担当。2020年10月に、グループ横断的なDX施策推進を担う「DX推進室」の初代室長に就任し、現在はJPデジタル COOを兼務している。
・日本郵便株式会社 デジタルビジネス戦略部 デジタル戦略担当 課長
引地 直樹(ひきち なおき)さん
2008年、郵便局株式会社に入社。郵便局勤務を経て、金融営業の企画・推進に携わる。東北支社の人事部門を経て、東京海上日動火災保険株式会社に出向。金融営業企画部、経営企画部を経て、デジタルビジネス戦略部デジタル戦略担当課長に就任。コロナ禍における混雑解消のため「窓口デジタル化PT」の立ち上げ、施策の試行、展開に従事している。
・株式会社JPデジタル マネジャー(兼 日本郵政株式会社 DX推進室 マネジャー)
岡田 彬嗣(おかだ あきつぐ)さん
2011年、郵便局株式会社に入社。郵便局勤務を経て、本社・近畿支社の金融営業の企画・推進や、本社の経営企画部門で郵便局のマネジメント改革に従事。日本生命への出向を経て本社の金融営業企画部に戻り、2020年10月から日本郵政DX推進室マネジャーに。2021年7月からJPデジタル マネジャーを兼務している。
「みらいの郵便局」にワクワクできるような場所を、ここ大手町に
――大手町郵便局で「みらいの郵便局」の実証実験をスタートさせるとのことですが、具体的にはどのようなことを行うのでしょうか?
岡田:「みらいの郵便局」がどのようなものになるのかを実際に体感してもらう場にしたいと思っています。まずは4月に、実証実験プロジェクトが始動したPRをかねてデジタルサイネージを置き、「みらいの郵便局」をイメージしてもらえる動画を流す予定です。お客さまはもちろん、社員の方にも「みらいの郵便局」の姿を見てもらい、ワクワクしていただきたいですね。
引地:すでに一部の郵便局で導入していますが、大手町郵便局でも「郵便窓口セルフレジ」とインターネットから混雑状況がわかる「デジタル発券機」の設置も検討しています。それらを正しく運用できるかを検証する場として、大手町郵便局を活用していく予定です。
――なぜ、大手町郵便局を実証実験の場に選んだのでしょうか?
引地:本社と同じビルに入っている郵便局なら、これからさまざまな取り組みを試していくなかでサポートもしやすく、機能の改善もスピーディーに行いやすいですよね。
大角:それに「せっかくやるんだったら、日本一目線の厳しいお客さま、つまり社員が近くにいる大手町郵便局で」と考えました。今、日本郵政グループで横断的なプロジェクトがいくつか動いていますが、それらをサービス化する前に「本当にこれでうまくいくのか」「しっかりと効果が出るのか」を、まず大手町郵便局で試してみようという段階です。
岡田:大角さんの言うように、社内の人の目に多く触れる場所の方が「これは使いにくいな」といったご意見がもらえる機会が多いと考えています。そういった声をもらったら「改善するためにはどういう方法がありますか? よかったら一緒にやりましょう!」と、進めていきたいんです。意見や改善策が出るのはとてもありがたいことで、大手町郵便局が日本郵政グループの社員の皆さんと一緒に「みらいの郵便局」を考える場になることにも期待しています。
――新しいことを始める際には、さまざまなハードルがあると思います。このプロジェクトを進めるうえで、どのような点に苦労されましたか?
岡田:2021年の9月からプロジェクトを進めてきましたが、「みらいの郵便局」がどんな姿になり、どのようなサービスがお客さまに望まれているのか、フロントで働く郵便局の皆さんの負担をどう軽減していくべきかをディスカッションするところに時間がかかりました。あとは、大きい組織なので、さまざまな施策を検討している部署やチームそれぞれと連携、調整をしながら進める難しさも感じています。ただ、「郵便局をよりよくしたい」「もっとお客さまに喜んでもらいたい」「もっとみんなが働きやすい環境を作りたい」という想いは同じように持っていることが改めてわかったので、大切なプロセスだったと思っています。
引地:これまでディスカッションにかなりの時間を割いてきましたが、これからもさまざまな課題が出てくると思っています。それは、私たちが実現したいことは、時代の変化へ敏感に対応しなければいけないからです。今の時点での「みらいの郵便局」は思い描けますが、その姿はどんどん変わっていくはずです。だからこそ、お客さまのニーズの変化に早期に気づけるかがカギ。あとは、これまでずっと郵便局を使っていただいた方のなかには、変化にとまどわれる方もいらっしゃるかもしれません。そういった方にどう対応していくかも、考えていかなければいけないと思っています。
今後はリモート相談ブースやAIカメラの設置も検討
――大手町郵便局では今後、具体的にどのような施策を試していく予定ですか?
岡田:郵便局には、お客さまからのさまざまな相談を受け、それをサポートする機能があると思っています。現在でも金融に関する相談は行っていますが、今後はさらにジャンルを広げ、郵便局がハブとなって日本郵政グループ内外を含めたさまざまなサービスにつなげるような仕組みを検討しているところです。具体的には、ワンストップでグループ以外のサービスなどの専門家につながる「リモート相談ブース」を設置したいと考えています。
飯田:郵便局は、手続きをする、用事を済ませるだけの場ではもったいないと思うんです。今後はシニアの方だけではなく、子育て世代の支援も考えていきたいですね。「郵便局でこんなことまでできるの?」と思っていただけるサービスを提供したいですし、今まで想像していなかったような、新たな提供価値を生み出していくことが、郵便局の使命の一つだと思っています。
――大手町郵便局にはAIカメラを導入される予定とのことですが、どのように活用していくのでしょうか?
岡田:お客さまのニーズや使い勝手を定量的にきちんと検証し改善できる環境やインフラを作るという意味で、2022年6月を目処にAIカメラを設置したいと思っています。導線や滞在時間などを把握・分析し、改善し続けることで、郵便局での体験・サービスをよりよくしたいという思いです。
引地:全国にある郵便局一律に同じサービスを提供するのではなく、それぞれの地域性やマーケットごとに適切なサービスを提供することが大切だと考えています。そのために、まずはお客さまの郵便局内での行動や滞在時間をしっかり把握、分析して、郵便局ごとに最適なサービスを提供できるようにする必要があると思っています。
大角:当社ではこれまで、ビフォーアフターの比較や、他社との比較、どちらが正しかったかを検証するABテストのようなことが、なかなかできていませんでした。今回AIカメラを設置することで、デジタル発券機を置いたらお客さまの行動がどう変わるのか、セルフ窓口と有人窓口どちらを使うのかなど、そういったデータを集めることができます。それらを、さまざまな施策を実行するうえでの判断材料に活用したいと考えています。
それぞれの郵便局に合わせた多様性のあるDXを展開
――大手町郵便局での実証実験を行いつつ、今後どのような展開を予定していますか?
岡田:都市部から地方まで郵便局は全国にありますが、それぞれに個性や特性があります。さまざまなパターンに対応するためには、大手町郵便局だけでは不十分ですので、まずは実証実験をする場所を増やしていきたいです。並行して、検証したお客さま体験を、今度は全国の郵便局に広めていければと考えています。
引地:少なくとも中期経営計画「JPビジョン2025」の期間中に、「みらいの郵便局」をある程度皆さんが認識している状況にしたいです。そのためには、私たちが取り組んでいることをしっかりPRしていきながら、いろいろな人を巻き込んでいって、日本郵政グループ全体でトランスフォーメーションに向けた動きにつなげていくことが大切だと考えています。時間を要してしまう部分もあるかもしれませんが、今後は私たちの取り組みを見ていただきながら、郵便局の方から「うちでこういうことをやってほしい」と手を挙げていただけたらうれしいです。
グループ一体となって新たな価値を生み出していく「チャレンジを"かたち"にする場」
――最後に、お客さまや社員の方へメッセージをお願いします。
引地:日本郵政グループは、幸いなことに全国に存在しており、多くの方に知っていただけている企業です。私たちが元気になれば、日本全体が元気になっていく。私は本気でそう思っているんです。そのためにも、これからどんどんチャレンジしていきたいですし、「みらいの郵便局」を見ていただいて、社員の皆さんやお客さまに「変わろうとしてるんだ」と感じていただきたいと思っています。
今回の実証実験での施策は、来ていただくお客さまにも、社員の皆さんにも、改善が必要な部分があればしっかりと伝えていただきたいと思っているんです。そのための実証実験店舗です。「チャレンジを"かたち"にする場」として、ご意見を参考に一緒に作りあげていきたいです。
岡田:お客さまには、便利なサービスをどんどん提供し続けたいですし、郵便局をもっと身近で人生のお役に立てる存在にしたいという想いがあります。そして社内の方には、「みんなで一緒に『みらいの郵便局』を作っていきましょう」というメッセージを伝えたいです。使っていただいて、率直なご意見をいただきたいです。日本郵政グループがもっと磨かれ「すごい会社なんだ」「すごい価値を提供しているんだ」と、社員みんなが胸を張って言えるようにしたいという思いがあります。チャレンジしたらこんなに楽しくなるんだ、という体験を社員の皆さんと共有したいですね。
大角:私は郵政省時代から事業に携わっていますが、民営化のタイミングで一度大きな変化があり、その時に種をまいたものが今育ってきています。ただ、実は民営化の際に成し得なかったことも結構あるんです。今はデジタルの力があり、仕事のやり方を変える技術も進歩しています。昔だったらできなかったサービス、あるいは昔だったら郵便局では競争上不利だったサービスが、デジタルの力で実現できるかもしれないと考えています。このプロジェクトを通じても、お客さまに「郵便局があってよかった」と思っていただけることを実現していきたいです。
飯田:彼らが今日話していたことを聞いてとてもうれしく思いました。私がやりたいことをしっかりと受けとめて理解し、彼ら自身が主体性を持って、自分事としてやろうとしてくれている。本当にこの組織をよくしていきたい、そしてお客さまのために郵便局をよくしていきたい気持ちを持っています。これも、「みらいの郵便局」を作るうえで大きな構成要素だと思うんです。 彼らがリーダーシップを持ってやっていくことによって、きっと徐々にいろいろな方を巻きこみながら広がっていく。この動きは、組織のトランスフォーメーションに向かう、いいきっかけになるはずです。
――これから変化することへの期待感にあふれるお話をありがとうございます。
大手町郵便局から見えてくる、「みらいの郵便局」のかたち。デジタルの力を取り入れながら、郵便局がこれまで以上にお客さまの多様なニーズに応えられる、より身近な存在になるために、JPデジタルのみならず、日本郵政グループのメンバーは挑戦し続けます。
大手町郵便局で放映中の「みらいの郵便局」の動画はこちら
※撮影時のみマスクを外しています。