未来の物流レボリューションVol.4 日本初!レベル4飛行でのドローンによる配送を実施!
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2023年3月24日、自然豊かな東京都西多摩郡奥多摩町で、日本郵便株式会社が日本で初めてレベル4飛行のドローンによる配送トライアルを実施しました。これからの物流の未来を予感させる配送トライアルの様子をレポートします。
日本郵便が取り組むドローンを活用した配送トライアルとは
日本郵便が輸配送業務へのドローンの活用を検討し始めたのは、2016年度のこと。2018年には、福島県南相馬市と浪江町間において日本初となる無人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル3)による配送を実現し、2019年からは、奥多摩町や三重県熊野市でトライアルを重ねてきました。2022年、改正航空法の施行によって、機体の認証制度や操縦士の国家資格が設けられ、レベル4の飛行が解禁となりました。レベル4とは、住宅地などの有人地帯でドローンの操縦者が目視できない範囲でドローンを自動飛行させる高度な飛行のこと。今回、国土交通省航空局から飛行の承認を取得のうえ、日本初となるレベル4での飛行を実施し、配送トライアルを行いました。
日本初!レベル4の飛行でドローンが荷物を運ぶ。奥多摩での配送トライアルをレポート
離陸前の奥多摩郵便局の屋上では、ドローンのオペレーターによって機体の点検を実施。念入りな点検が繰り返され、現場に緊張感が走ります。
点検が完了すると、日本郵便の社員が約1kgの荷物を機体の下に装着。プロペラが回り出し、屋上から空に高く上昇すると、車が行き交う道路や住宅の上空を通り、最高時速36kmのスピードで配送先の山中へと飛んでいきました。
向かうのは、片道4.5kmほど先にある山間部の住宅です。ドローンは、あらかじめ設定されたルートを9分ほど飛行し、目的地である住宅の庭先に着陸しました。
機体から荷物を自動で切り離すと、ドローンは再び上昇し、もと来たルートを辿って奥多摩郵便局へと戻っていきます。今回の総飛行距離は往復で約9km、総飛行時間は約18分。2019年度に実施されたレベル3飛行でのトライアルでは有人地帯を迂回する飛行ルートでしたが、今回のレベル4飛行では有人地帯の上空に効率的な飛行ルートを設定することが可能になりました。その結果、以前のレベル3と比較すると、飛行距離は22%(約5.8km→約4.5km)、飛行時間は40%(約15分→約9分)短縮されました。
ドローンの活用による利便性の向上に期待
今回のトライアルでドローンが配達した荷物を受け取った小峰 亘(こみね わたる)さんにドローン配送の感想を伺いました。
――今回のレベル4飛行での配送トライアルはいかがでしたか。
小峰:ドローンでの配送トライアルには当初から協力していますが、最初に比べるとドローンの機体性能がずいぶん向上してきて、地面に降りるときも機体が安定しているなと感じます。
――ドローン配送にどんなことを期待しますか。
小峰:無理をして人が行かなくてもよいところはドローンで運べば、特に冬などはよいのではないかと思います。
土砂崩れがあって道がダメになったときには、一番役に立つのかなとも思います。
以前より、ドローン配送のトライアルを行ってきた奥多摩郵便局の課長 春日 勝義(かすが かつよし)さんにもお話を伺いました。
日本郵便株式会社 奥多摩郵便局 課長
春日 勝義(かすが かつよし)さん
――ドローンでの配達について、どういった可能性を感じていますか。
春日:過去には台風で道路が使えず、配達できないこともありました。また、林道を使い普段より3時間以上も時間をかけて配達したこともあります。ドローンを活用することで、道路状況に左右されることなく、迅速に配達できるのではないかと期待しています。
特に、奥多摩のさらに奥の県境エリアなどは配達にかなり時間がかかります。ドローンを使い最短ルートで配達できればすぐにお届けできて、お客さまにとって利便性が高まると思います。
機体の安全性と信頼性を高めながら実装を見据えた取り組みを
レベル4飛行のドローンによる配送トライアルは、まさに実用化の一歩手前という段階です。日本には、少子高齢化、労働力不足というさまざまな課題があるなか、日本郵便においてもオペレーションの効率化・改善について検討してきました。
機体の安全性と信頼性を高めながら実走を見据えた取り組みを担当している日本郵便株式会社 オペレーション改革部 係長 伊藤 康浩(いとう やすひろ)さんに、今回の配送トライアルの状況や今後への期待、展望についてお話を伺いました。
日本郵便株式会社 オペレーション改革部 係長 ※
伊藤 康浩(いとう やすひろ)さん
※取材時(2023年3月)の所属を記載しています。
――日本初であるレベル4の飛行のポイントを教えてください。
伊藤:大きく3つのポイントが挙げられます。まず、国の認証を取得した機体を用意すること。そして、国が認証した技能を持ったパイロットを用意すること。そして3つめは、国が決めた運航ルールを守ることです。機体については、業務提携先の株式会社ACSLに開発していただきました。技能の認証についてもこれまでのレベル3での実績を持つパイロットが技能認証を取得しました。運航ルールについては、これまで日本郵便として制度整備のための検討会などに参画していた経緯もあり、早期に対応を検討することができました。新たな制度の施行から早々に運航ルールに沿った準備・申請を適切に行って国の承認を取得し、今回の配送トライアルへと結びつきました。
――ドローンの機体については、レベル3からレベル4ではどのような進化がありましたか。
伊藤:第三者上空を飛行することから、機体の安全性や信頼性が高まっています。例えば、GPSを受信するアンテナが2つに増えていて、どちらかに故障があっても、もう片方で飛行を継続できるようになっています。
また、急な機体の故障などに対応するため非常用パラシュートもこれまでよりもさらに信頼性の高いものを搭載しています。
――今回の配送トライアルを踏まえて、今後の展望をお聞かせください。
伊藤:今後はさらに積める荷物の大きさと重さを増やすと同時に飛行距離も延ばして、活用できるエリアを増やしていく予定です。今回のような配送トライアルをしっかりと重ねながら進めていきたいと思います。
――ドローンの配送は、地域の方の理解や協力が不可欠かと思います。地域の皆さまへのメッセージをお願いします。
伊藤:奥多摩町の方には、ドローン配送のトライアルにご理解をいただき、大変感謝しています。また、このように私たちの取り組みを受け入れてくださる土台は、やはり郵政151年の歴史を通じた信頼感にあるとも感じます。この先、私たちがこうしたトライアルを行っていくには、地域の皆さまの理解と協力が不可欠です。これからも良好な関係を築いていけるように、丁寧に取り組みを進めていきたいと思います。
日本初となるレベル4の飛行による配送トライアルで見えてきた物流の新たな可能性。配送トライアルのその先にあるドローンでの輸配送があたりまえの日常風景になる日に向けて、日本の物流にイノベーションを起こしていきます。
※撮影時のみマスクを外しています。