日本の街を元気に! 郵政が描く、まちづくりのデッサンVol.3 ゆうぽうと跡地に「五反田JPビルディング」地域に愛されるランドマークへ
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日本郵政グループの一員として、グループの不動産開発などを担う、日本郵政不動産株式会社。同社が開発・推進し、2024年4月26日にグランドオープンしたのが「五反田JPビルディング」です。場所は、30年以上にわたって五反田のランドマークだった「旧ゆうぽうと」跡地。地元住民が寄せていた想いも継承しつつ、「TOKYO, NEXT CREATION」をコンセプトに、多機能が融合する大型複合施設に生まれ変わりました。このプロジェクトに込められたものは何か、担当者に伺いました。
日本郵政不動産株式会社 開発本部 開発第二部
川中 泰弘さん(かわなか やすひろ)さん
2010年、株式会社ゆうちょ銀行入社。2017年に日本郵政株式会社に出向し2018年より現職。五反田JPビルディングの開発に携わる。
※取材時(2024年3月)の所属を記載しています。
日本郵政不動産株式会社 開発本部 商業施設室
平野 敬大(ひらの けいた)さん
2023年、日本郵政不動産株式会社に入社。本プロジェクトではテナント募集を手がける。
地元で長く親しまれた、旧ゆうぽうとの複合再開発
――川中さんが不動産業務に携わるようになった経緯を教えてください。
川中:入社したゆうちょ銀行で携わっていた住宅ローンの仕事を通じて、不動産に興味を持ったのがきっかけでした。その後、不動産開発が今後の日本郵政グループの重要な事業になるという話を聞いて異動願いを出していたところ、7年前の2017年に出向が叶いました。
――念願叶って、五反田JPビルディングの開発に携わることになったのですね。
川中:はい。本プロジェクトには、幸運にも最初のフェーズから開発全般に携わることができました。旧ゆうぽうとは1982年の開館当初から地元の方々に親しまれていて、五反田駅からゆうぽうとに通じる通りは「ゆうぽうと通り」と呼ばれていたほどです。それだけに、その跡地に建てた五反田JPビルディングには、地元に愛される存在であり続けるための、さまざまな施設や機能を盛り込んでいます。
――例えばそれは、どのような施設でしょうか。
川中:まずは2階にある約1700㎡のシェアオフィスです。五反田は、比較的割安な賃料のオフィスビルが多い一方で、都心の主要ターミナルやオフィス街へのアクセスがよいことから、多くのITベンチャーやスタートアップ企業が集積しており、「五反田バレー」という別名を持っています。そこで、五反田JPビルディング内に広いシェアオフィスを設けることで、そうしたITベンチャーやスタートアップ企業の活動拠点の一つになってもらえればと考えています。入居企業同士の交流を生むシェアキッチン付きのオープンスペースに加えて、サウナも備えている点は、ほかのコワーキングスペースには見られない特徴です。
――サウナですか! シェアオフィスのワーカー同士で"ととのう"こともできそうですね!
川中:そうですね! 以前、シェアオフィスにサウナを備えるアイディアを五反田バレーのいくつかの企業さまにお話しした際、予想以上によい反響をいただいていたので、今回実装できたことで、多くの方に喜んでいただけたらと考えています。ちなみにサウナは、現在のサウナブームが始まる以前の発案なのが自慢です(笑)。"サ活"で発想の枠を広げたり、ほかの企業さまとのコミュニケーションを深めたりしていただきたいですね。
シェアオフィスからオフィスにステップアップしていただき、ゆくゆくは五反田JPビルディングから世界で活躍する企業が巣立ってくれればうれしいです。
エントランス前には四季を感じられる「森」が出現!
――地元に愛される施設として、ほかにはどのようなものがありますか。
川中:3階のホールとギャラリー「CITY HALL & GALLERY GOTANDA(品川区立五反田産業文化施設)」です。旧ゆうぽうとには、客席数1,800超を有した大きなホールがあり、コンサートやバレエ公演などのメッカとして知られていて、その歴史を継承したものです。五反田JPビルディングのホールはシアター形式で435席(最大収容人数)、それに加えて約100名収容のギャラリーも設置しました。ビジネスはもちろん、地域の方の展覧会などの文化活動、集会や宴会などでもご利用いただければと思っています。
――さらに、植木などの緑をふんだんに設けたそうですね。
川中:そうなんです。五反田は緑地や公園が比較的少ない街なので、五反田JPビルディングには、緑あふれる場所を作ろうと思い、メインエントランスの前に樹木を多数植えて「五反田の森」と名づけました。この先、樹木の生育とともに枝葉が横に広がっていき、10年後くらいには本当の森のようになるでしょう。ここを通るだけでも、四季折々の変化を楽しめると思います。
――開発にあたり、苦労されたことはありましたか。
川中:何といっても、コロナ禍のなかでさまざまな業務を進めなければならなかったことです。このプロジェクトは当初、比較的順調に進んでいたのですが、高層階に入っていただくホテルの選定は、観光業が大打撃を受け、どの会社も新規出店を控える時期だっただけに困難を極めました。このままホテルを導入する方向で進めることができるのかと悩みました。
――そのようなピンチをどう乗り越えられたのでしょうか。
川中:全国展開する都市型観光ホテルブランドを有する会社が名乗りを上げてくださいました。出店の理由は、五反田の街ならではの多様性だったとお聞きしています。オフィス街、そこで働くワーカーを対象にした昔ながらの飲食店街、高級住宅街、目黒川、桜並木など、半径500mくらいのエリアにいろいろな要素が集積している点が非常にユニークであるとのこと。私たちも五反田の魅力はそうした多様性にあると感じています。五反田JPビルディングのご利用を通じて、一人でも多くの方に五反田の街の魅力を知っていただければと思っています。
フードホール「五反田食堂」 五反田ならではの味を発信
1階のフードホール「五反田食堂」のリーシング業務などを担当された平野さんにもお聞きします。
――業務においては、どのような点に苦労されましたか。
平野:最も苦労したのは店舗工事の調整です。昨今の工事費高騰などの影響を受けて、なかなか調整が進まず、「グランドオープンに間に合うのか?」といった声が聞こえてくる時期もありました。そうしたなか、社内外の打ち合わせを毎週のように行い調整を重ねた結果、何とかグランドオープンに間に合わせることができました。最大の苦労が最高の充実感に変わりましたね。
――川中さんがおっしゃっていたキーワード「地元に愛される施設」という考え方は、フードホール「五反田食堂」にも導入されているのでしょうか。
平野:はい。実際に五反田の街の文化に触れながら、地元に愛されるフードコートを目指してテナント募集・誘致に取り組みました。その結果、五反田で長く支持されてきた予約困難な名店や、商業施設初出店の飲食店など、バラエティ豊かなラインナップとなりました。
――「五反田食堂」はどのような存在になってほしいですか?
平野:地域住民、オフィスワーカー、観光客など多様な人々の胃袋を満たす「五反田ならではの味」を発信する場として、末永く愛される存在になってくれるとうれしいです。
多様な人との出会いを通じて、まちづくりに貢献する
――4月26日、五反田JPビルディングがグランドオープンしました。グランドオープンの感想をお聞かせください。
川中:いざグランドオープンして心に湧き上がってきたのは、「ほっとした」でしたね。五反田JPビルディング内のさまざまな施設をお客さまが利用してくださっている姿を見て安心しましたし、大きなトラブルが起こらなかったことも何よりだったと思います。
――特に印象に残ったことはありますか。
川中:印象的だったのは、五反田食堂が地元の老若男女でにぎわっていたことです。まさに「地元に愛される施設」を体現していたと感じました。五反田食堂に加えて、この五反田JPビルディングが、「TOKYO,NEXT CREATION」というコンセプトどおりに、新しい生き方や働き方、生活、世界を変えるイノベーションを発信する場になることに期待しています。
――平野さんは、未来の五反田JPビルディングにどのような役割を期待しますか。
平野:地元のコミュニティ活動や文化イベントの拠点となって地域のつながりを強め、ひいては五反田におけるビジネスや商業施設の成長を後押しする存在になればうれしいですね。地域住民や来街者にとって、唯一無二のランドマークとなることを期待しています。
――川中さんにお聞きします。日本郵政不動産ならではの強みと仕事の魅力を教えてください。
川中:私たちの強みは非常に明確で、保有不動産が長い歴史を持ち、地元に愛されているということです。五反田JPビルディングでも、旧ゆうぽうとの時代から積み重ねてきた信頼と愛され具合を実感しましたね。日本郵政不動産の再開発プロジェクトでは、従前の歴史も継承しつつ、以前にも増して愛される存在になり、街全体の価値を引き上げていくことが求められます。困難な仕事ではあるのですが、やりがいはそれをはるかに上回りますね。
――まちづくりに貢献することの面白さや醍醐味を感じられているのですね。
川中:そうですね。街に多様な要素があることにひもづいて、さまざまなポジションや、さまざまな人との出会いが醍醐味だと思っています。多様なご意見を調整することは至難の業でもありますが、それを乗り越えてまちづくりに貢献できるのは、この仕事だからこそ体験できることです。これからも引き続き、大規模な複合再開発プロジェクトに携わっていきたいと考えています。
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