日本の街を元気に!郵政が描く、まちづくりのデッサンVol.4 大阪駅直結の「JPタワー大阪」。建設資材が届かないアクシデントを乗り越えた"逆転の発想"とは?

日本の街を元気に!郵政が描く、まちづくりのデッサンVol.4 大阪駅直結の「JPタワー大阪」。建設資材が届かないアクシデントを乗り越えた

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2024年7月31日、JR大阪駅西口直結の複合ビル「JPタワー大阪」内の商業施設「KITTE大阪」がグランドオープン! オフィス、劇場、商業施設、ホテルなどの全施設が稼働し、JPタワー大阪は大阪の新たなランドマークとして本格的にスタートを切ることになりました。今回は、日本郵政グループの不動産事業を担う日本郵政不動産株式会社において、このプロジェクトに携わった2人の開発担当者に、プロジェクトに込めた想いなどを伺いました。

垣内 俊宏(かきうち としひろ)さん

日本郵政不動産株式会社 開発本部 大阪営業所 マネジャー

垣内 俊宏(かきうち としひろ)さん

2010年、郵便局株式会社入社。郵便局舎の移転・修繕、JPタワー(東京・丸の内)のインターメディアテクなど公共貢献施設の運営管理を経て、2020年に日本郵政不動産に出向し、現職。JPタワー大阪の開発、開業プロモーション業務に携わる。

鈴木 聡(すずき さとし)さん

日本郵政不動産株式会社 開発本部 大阪営業所 主任

鈴木 聡(すずき さとし)さん

2011年、郵便局株式会社入社。窓口社員として仙台錦町郵便局に配属後、東北支社を経て、本社に配属。2019年に日本郵政不動産に出向し、現職。JPタワー大阪の開発に携わる。

サウナ、ラウンジも! オフィスワーカーへの支援に注目

――まずは垣内さんにお伺いします。JPタワー大阪の特徴を教えてください。

垣内:大きく分けて2つあります。第一はオフィス、劇場、ホテル、商業と4つの機能を有する大規模複合用途ビルであること。そして第二は、アクセスの利便性です。

この開発とともに新設された大阪駅の西口改札と直結しているだけでなく、大阪駅からサウスゲートビルディングを経由して接続する歩行者デッキや、西梅田地下歩行者道路「ガーデンアベニュー」とも接続しています。さらに、今回、KITTE大阪をグランドオープンするにあたり、建物の内部を南北に通り抜けることのできる通路も開通しました。JPタワー大阪を介して、梅田の西側エリアに簡単に行けるようになったので、来街者の回遊性が飛躍的に高まりました。

JR大阪駅の西側エリアに建つJPタワー大阪
JR大阪駅の西口改札と直結(写真左)。さらに、KITTE大阪2階と大阪駅をつなぐ歩行者デッキも利便性が高い(写真右 PHOTO Akira Ito / aifoto )

――鈴木さんは、このプロジェクトにどのようにかかわっていましたか。

鈴木:主に2つの業務に携わりました。1つ目は、11~27階のオフィスで働くワーカー専用の共用施設「オフィスサポートフロア」の領域です。充実した共用施設があることは、近年の"選ばれるオフィス"に不可欠な要素です。また、2017年にオープンしたJPタワー名古屋の同施設が好評をいただいていることもあり、「名古屋を超えるものを!」と力を入れて取り組みました。

緑に囲まれた屋上庭園。晴れた日には談笑やミーティングも

――施設の一部にはサウナもあるそうですね!

鈴木:そうなんです。今でこそサウナブームと言われていますが、導入を検討していたころはまだブームの前。関係者に、サウナがいかにワーカーのウェルビーイングに貢献するかを説くのはなかなか大変でした。私自身も、名古屋や東京などで"聖地"と称されるサウナ施設を視察して説得材料を集め、何とか実現に結びつけることができました。

朝7時から利用できるサウナ。出勤前にひと汗流すワーカーも多いという(PHOTO Akira Ito / aifoto)

――心身ともにリフレッシュできそうですね。

鈴木:ぜひそうあってほしいですね。また、8階には大阪の文化でもある"社交クラブ"をイメージしたラウンジ「倶楽部 梅三」もあります。レトロな雰囲気の内装が話題です。さらに、9階のダイニングからつながる屋上庭園も特長的な空間です。単なる憩いの場ではなく、ビアガーデンや大型スクリーンを活用した映画鑑賞などのイベントも実施していきたいと思っています。

社交場をイメージしたラグジュアリーな空間が広がる「倶楽部 梅三」

――主に携わったもう1つの業務とは何ですか。

鈴木:もともと、この地にあった大阪中央郵便局が7月29日にJPタワー大阪1階に移転したのですが、これに向けて、さまざまな調整業務を担いました。今年は大阪中央郵便局の前身である旧大阪中央郵便局が開局してから、ちょうど85年にあたる節目の年です。以前と変わらずにご利用いただけるよう、環境を整えました。

KITTE大阪には、体験したことのない"出会い"が待っている

――KITTE大阪には、旧大阪中央郵便局の歴史を継承し、未来へつなげる仕掛けも導入されていると伺いました。

垣内:大阪駅西口と直結する1階は、4層吹き抜けの開放的なアトリウムになっていまして、外から見るとまるでガラスケースに囲まれたような形で旧大阪中央郵便局舎の一部を保存・継承した建屋を設置しています。ライトアップされると、威厳あるアート作品のようにも見えますね。

エントランスを抜けると、眼の前にはレトロな雰囲気漂うアトリウムが

――JPタワー大阪が建つこの地は、由緒ある場所なんですね。

垣内:そうですね。ここはかつて、1874年に開業した初代大阪駅の跡地でした。その後、大阪駅は移動・改造等を重ねて、現在の駅舎は5代目にあたります。JPタワー大阪の開発にあたり、土地を掘削した際には、初代の駅で使われていた枕木やレールなどが出土したんです。

そして1939年には、郵便の鉄道輸送に都合がよい立地であることから、旧大阪中央郵便局が竣工しました。つまりこの地は、初代大阪駅が開業してから約150年の間、鉄道の旅に出る人、想いを詰め込んだ荷物を郵便局に届けに来た人たちなど、多様なヒト・モノ・コト、そして想いが集まり、さまざまな出会いや物語を生み出してきた場所でもあるわけです。

永い歴史を感じさせる旧大阪中央郵便局舎の窓枠や床。真新しい建物のなかでも、しっくりと馴染んでいます

――そのようなストーリーがあるからこそ、KITTE大阪に旧大阪中央郵便局舎の一部をレガシーとして展示したわけですね。

垣内:そうです。さらに、郵便局とJRの駅が全国津々浦々、網の目のように日本の各地域を結んでいることを踏まえて、2階には日本各地のアンテナショップが集結する「Feel JAPAN Journey(ええもん にっぽん めぐり)」を造りました。ここでは大阪にいながらにして、全国の魅力的な品々に出会うことができます。

日本全国の"いいもの"が集まるポップアップスペースでは、「ローカル共創イニシアティブ」で地方創生を担う社員が集結。各地の名産品を販売していました

――そんな新たな出会いにワクワクしますね!

垣内:この「出会い」は、KITTE大阪のコンセプトにも通じるものです。KITTE大阪は、多くの人が"まだ知らない、まだ体験したことのない"日本各地のいいものを集め、日本のよさを発見・再認識できる場所を目指したいという想いから、「UNKNOWN(アンノウン)」をコンセプトにしました。ですから、先のアンテナショップだけでなく、ほかの物販や飲食店でも「関西初出店」、「商業施設初出店」といった店舗が多いんです。

7月31日のグランドオープン当日には、大勢のお客さまにお越しいただきました

ロックダウンで資材輸入停止! 工事現場を救った"逆転の発想"とは?

――携わった仕事のなかで、特に印象深かったものはありますか。

鈴木:大阪中央郵便局前の2つのポストの装飾ですね。郵便局のキャラクター「ぽすくま」で装飾したポストを「ぜひJPタワー大阪で!」と発案しました。

最終的に、ぽすくまとぽすこぐまをポストと一体化させたデザインが採用となって、ぽすくまがたこ焼きを持っていたり、お好み焼きやいわゆる"大阪のおばちゃん"もデザインに混じっていたりと、かなり"大阪色"があるものを実現できたと思います。

また、大阪中央郵便局のポストは、毎日膨大な量の郵便物が投函されるのですが、ポストの装飾工事のためにおよそ5日間もポスト取集を止めなければいけないことや、そもそもぽすくまの装飾が可能か、関係各所との調整が想像以上に困難でした。でも、除幕式で多くの方の笑顔を見たときは、大きな達成感がありましたね。

鈴木さんが手がけた"大阪感"満載のポスト。遊び心あふれるデザインのポストに、思わず足を止める人たちも多く見られました

――垣内さんはいかがでしょうか。

垣内:これは開発にかかわったすべての人たちに共通すると思いますが、やはり苦労したのはコロナ禍です。本格的に開発が始まったタイミングでコロナ禍になってしまって、慣れないオンライン会議を余儀なくされました。ようやく慣れてきたかと思えば、今度は中国・上海のロックダウン。ビルの外装を覆うための主要資材を船便で輸入するはずが、ロックダウンで上海港が機能しなくなってしまったんです。

――主要資材が手元に届かないというアクシデントに見舞われたんですね。

垣内:ロックダウン解除の見通しがまったく立たなかったので、どう対処するか、施工者である大手総合建設会社をはじめ、プロジェクトチームで検討した結果、工程を大幅に変更することにしたんです。本来は外装を設置してから内装工事に入るのですが、外装資材がないので、仮囲いをして風の侵入を防ぎ、内装工事に先行着手することにしました。内装から造り、外装資材が到着したら外囲いを造る、いわば「逆転の発想」です。異例の順番で工事を進めていた一方で、いつロックダウンが解除され資材が届くのか先が見えなかったので、ロックダウン解除の報が届いたときは、本当に安堵しました。

居心地のよい快適な空間のオフィスロビー。ここでもこだわりの資材が使われている(PHOTO Akira Ito / aifoto)

――ほかの業務に関してはどうでしたか。

垣内:ブランディングやプロモーションの業務も印象深いですね。大阪駅周辺には、数多くの商業施設が集積しています。そうした環境において、どのようにKITTE大阪を差別化し、多くの方に選んでいただく施設とするかに頭を悩ませました。そこで掲げたのが「つながりのはじまり」というキーワードです。

先ほど申し上げましたが、KITTE大阪が入っているJPタワー大阪は、初代大阪駅の開業地であり、旧大阪中央郵便局があった場所にあります。だからこそ、この土地の特性や歴史を大切にし、かつて日本各地から集まっていたヒト・モノ・コトが、商業施設として生まれ変わったあとも、ここから新たに「つながりのはじまり」を創る拠点として、次の歴史が幕開けするストーリーを伝えていくことに着眼しました。

日本郵政グループの資産でまちを進化させ、未来の地図に残す

KITTE大阪のオープニングセレモニーには、コラボレーションソングを担当されたアイナ・ジ・エンドさんも参加

――将来、JPタワー大阪がどのような存在になってほしいと考えていますか。

鈴木:大阪駅前の新たなランドマークとして、オフィスワーカー、来街者、地域の方、インバウンドなど、多くの方に愛される施設になってほしいと思っています。個人的には、先ほどお話しした、大阪中央郵便局入口に立っている2基のポストにもご注目いただきたいですね(笑)。

JPタワー大阪前の道には、郵便局のシンボルツリーである「タラヨウ」が植えられています

垣内:2023年に関西空港駅発の特急はるかが大阪駅に停車するようになったことに伴って、大阪駅は「関西における日本の玄関口」の役割を強めました。つまり、初来日のインバウンドにとって、大阪は「最初に日本を知ることができる場所」にもなりうるわけで、KITTE大阪が、それにふさわしい施設になってほしいと願っています。ちなみに、外壁の「KITTE」ロゴサインに使われている「青緑色」は私が監修した色なんです。内照式にすると色が飛んでしまうし、かといって色を暗くすると昼間は黒っぽく見えてしまうしで、試行錯誤を繰り返しながら追求した色なので、個人的にはイチ押しポイントの一つです。

エントランスや外壁など、さまざまな場所で目を引くロゴ。垣内さんのこだわりのカラーリングが活かされています

――最後に、今の仕事の面白さ、将来の目標などをお聞かせください。

鈴木:日本郵政グループが保有している不動産が、生まれ変わり、未来に受け継がれていく、という大きな意義のある仕事に携われるのは、非常にやりがいを感じています。私が不動産開発の領域に足を踏み入れたきっかけは、2012年に社内の広報誌に載っていた、東京駅前のJPタワー竣工の記事でした。「日本郵政グループにはこんな事業をするセクションがあるのか!」と衝撃を受け、それ以来、自分もこのような仕事に携わりたいと強く意識するようになったんです。その12年後、造り手の一人としてJPタワー大阪の完成に立ち会うことができて感無量です。将来は、出身地である仙台でも不動産開発に携わり、地域に貢献できればうれしいですね。

地上39階の屋上にあるヘリポート。大阪の街を望みながら、出身地である仙台にも想いを馳せる鈴木さん

垣内:大阪駅前の新たなランドマークという"地図に残る仕事"に携われたことに誇りを感じています。私は大学で都市計画を専攻していて、まさに当時の学びが、JPタワー大阪という、言うならば"一つのまちづくり"につながったと思っています。

今後も、全国のさまざまな土地で開発に従事したいですし、JPタワー大阪とは違う「住宅」など、異なる機能を有する複合開発にも挑戦したいですね。また、今回「どのように社会に知っていただくか」の重要性も認識したので、引き続き、開発不動産のブランディングやプロモーションにもかかわっていければと思います。

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