【クイーンズ駅伝2024】創部10周年で4度目の優勝‼ 「つなぐプライド」で女王の座を掴み取った日本郵政グループ女子陸上部。その舞台裏に密着!
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2024年11月24日(日)に宮城県で行われた「第44回全日本実業団対抗女子駅伝競走大会(クイーンズ駅伝in宮城)」。今年、創部10周年を迎えた日本郵政グループ女子陸上部「POSTIES(ポスティーズ)」は、最終6区までもつれるレース展開のなか、4年ぶり4度目の優勝を成し遂げました。その裏にはどのようなドラマがあったのでしょうか? 現地で密着取材しました。
菅田 雅香(すがた みやか)選手
チームの現キャプテンで、今大会では2年連続で1区を担当。クイーンズ駅伝2019、2020年連覇メンバーの一人。
牛 佳慧(ぎゅう かえ)選手
昨年ルーキーながらクイーンズ駅伝で2区を走り区間2位。各区間で最も印象的な走りをした選手に贈られるMIR賞(Most Impressive Runner賞)にも輝いた。今大会では2年連続で2区を担当。
廣中 璃梨佳(ひろなか りりか)選手
ケガ明けで今年初のレース出場となった。クイーンズ駅伝2019、2020年連覇メンバーの一人で、東京2020オリンピック日本代表(5000m、10000m)。今大会では4年連続で3区を担当。
カリバ・カロライン選手
ケニア出身、鹿児島県の神村学園高等部を卒業し今年入部したルーキー。廣中選手を目標にしてPOSTIESに加入。4区を担当。
鈴木 亜由子(すずき あゆこ)選手
2014年創部から在籍し、初代キャプテンを務めた。リオ2016、東京2020オリンピックの2大会で日本代表。今大会では3年連続で5区を担当。
太田 琴菜(おおた ことな)選手
3代目キャプテン。クイーンズ駅伝には2021年(5区、区間7位)、2022年(2区、区間1位/区間賞)に出場。今大会はアンカー6区を担当。
髙橋 昌彦(たかはし まさひこ)監督
2014年のチーム創部から監督を務める。クイーンズ駅伝は2015年に初出場。翌年に初優勝し、2019、2020年には連覇達成。2016年から2023年までの間、翌年の出場シード権が与えられる「クイーンズ8」入りも8年連続で達成している。
知られざる、大会前日の「チームミーティング」
大会前日、選手、監督、チームスタッフの姿はホテルの一室にありました。メンバーに選ばれた6人へゼッケンを渡し、翌日のレースに向けた激励を行うためです。
「創部のころはチームミーティングも選手と数名のスタッフのみ。10年を経て、多くの方に見守られるようになり、応援してくれる人たちが増えてきたことを感慨深く思います」創部から指揮を執ってきた髙橋監督は、感謝の言葉を口にします。
今大会に選ばれたメンバーは、1区=菅田 雅香選手、2区=牛 佳慧選手、3区=廣中 璃梨佳選手、4区=カリバ・カロライン選手、5区=鈴木 亜由子選手、6区=太田 琴菜選手。
それぞれにゼッケンが手渡され、各選手は引き締まった表情に。全国で働く日本郵政グループの社員の期待が、6枚のゼッケンに込められているという厳かな雰囲気が漂います。
髙橋監督から明かされていた「レースプラン」
実はこのミーティングでは、髙橋監督の口からレースプランも明かされていました。
「オーダーとしては1〜4区にスピードのある選手をそろえ、5、6区には勝負強いベテランを配置しました。前半から勝負を挑んで、レースの主導権を握っていく戦略です」(髙橋監督)
駅伝は、6人の選手がそれぞれの区間を走った合計のタイムで競われる競技ですが、単純な足し算だけでは計れない展開が待っています。たすきには、出場する選手だけでなく、控えとなった仲間たちや日々の練習を支えるチームスタッフ、そのほか応援してくれる多くの人たちの想いが、たくさん詰まっているのです。
チームミーティングの最後には、選手、監督、スタッフ、関係者全員が輪になって円陣が組まれました。「つなぐプライド、笑顔で走れ!」という監督のかけ声に合わせて、みんなで声を上げると、選手たちの顔には満面の笑みが見られました。
運命の6区間、42.195km
レース当日、天気は快晴。気温11℃、湿度48%、風速6.0m/sとやや風の強いコンディションで、松島町文化観光交流館前から、全24チームの選手がスタートしていきます。
1区(7.0km)の菅田選手は、常に集団の先頭付近に位置してレースを進めます。惜しくも最後のスパート合戦には遅れを取ったものの、首位の積水化学から5秒差の3位で牛選手にたすきをつなぎます。
「本当は、リードしてたすきを渡したかったんですが、前が見える位置ではつなげました。最低限の仕事はできたのかなと思います」(菅田選手)
2区は4.2kmという短い区間で、各チームともスピードのあるランナーをそろえます。トップの積水化学が快走したものの、牛選手も区間新の走りで2位に順位を上げ、トップと17秒差でたすきをつなぎました。
「昨年も2区を走って、その自分を超える区間新を狙っていたので区間賞を取れなかったのは少し残念ですが、与えられた役割をきちんと果たすことができました」(牛選手)
各チームのエースが集う最も長い区間(10.6km)の3区では、廣中選手が会心の走りを見せます。今年は1月からケガに苦しみ、クイーンズ駅伝が今シーズン初レースとなりましたが、ブランクを感じさせない走りで一時先頭に。しかし、ここで追い上げてきたのが資生堂。廣中選手は2位を死守し、4区へとたすきをつなぎます。
「1区、2区のいい流れを受けて自分の走りができて、首位を奪えたのは評価できると思います。ただ、資生堂さんに抜かれたのは、悔しかったです。それでも、ラストまで粘りの走りができました」(廣中選手)
唯一、外国人ランナーが走れるインターナショナル区間である4区(3.6km)のカロライン選手は、4月に入社してルーキーとして初めてのクイーンズ駅伝。走り始めるとすぐに先頭を捉え、そのまま抜き去って首位を奪還。2位に22秒差をつける快走を見せてくれました。
「目標にしていた区間賞は取れませんでしたが、チームの優勝に貢献できて、とてもうれしいです」と、カロライン選手。
もう一つのエース区間である5区(10.0km)では、チームの大黒柱である鈴木選手が激しい首位攻防戦を展開。中盤で積水化学に追いつかれるも、後ろにつきながら攻め時をうかがいます。
コースに面した日本郵便株式会社東北支社の前では、社員を中心に応援団が大きな声援を送っていました。その応援を力に変えて、鈴木選手の力走が続きます。
終盤になると、お互いに前に出たり抜かれたりを繰り返しますが、最後は鈴木選手がスパートをかけ、2位と1秒差のトップでアンカー太田選手にたすきをつなぎます。
「今の自分の力を出せたと思います。みんなが頑張ってくれたこと、たくさんの応援が最後まで私の背中を押してくれたので、琴菜(太田選手)に良い形でたすきをつなげたと思います」(鈴木選手)
最終の6区(6.795km)、鈴木選手の「行け――!」というかけ声とともにたすきを受け取ったアンカーの太田選手ですが、積水化学に先行を許します。しかし、太田選手は諦めていませんでした。区間の中盤で追いつくと、デッドヒートを展開。
沿道からは、「太田頑張れ!」「こっちゃん頑張って!」と、多くの声援が飛びます。両チーム共にお互いに一歩も引かない走りが続いていましたが、ゴールまで2kmを切ったところで太田選手がスパートをかけ相手を振り切り、ぐんぐんと差を広げます。
ゴールとなる弘進ゴムアスリートパーク仙台のトラックへの入口では、ひときわ大きな声援でチームの仲間が太田選手を迎えました。
トラックに入り、真っ赤に染まった日本郵政グループの大応援団の前を通り過ぎ、右の人差し指を高々と空に向け、優勝のゴールテープを切りました。
日本郵政グループ女子陸上部が、4年ぶり4度目の栄冠を手にした瞬間です。記録は、2時間13分54秒でした。
「つなぐプライド」がもたらしたチームワークの勝利
メンバーとして戦った選手も、当日サポートに回ったチームメイトも、そして監督やコーチ、マネジャー、チームスタッフみんながお互いをたたえ合います。
涙を見せる人もいれば、弾ける笑顔の人も。昨年の準優勝という悔しさを忘れず、1年間、全員で取り組んできた努力が最高の結果で報われました。
優勝チームとしての記者会見後、ゴールの舞台となった競技場で各選手に話を伺いました。
キャプテンの菅田選手は、「この1年間、10周年で優勝しようとチーム13人全員で声をかけ合ってきたので、本当にチームワークで勝てたと思っています」とメンバーに感謝。牛選手も「レースに先立って行われた壮行会などで、社員のみなさんの熱い想いを受け取って力になりました」と感謝を述べました。
「まわりの人たちの応援が力になって、最後までしっかりと走り切ることができました」と、応援の心強さを挙げたのは、ルーキーながら見事な走りを見せたカロライン選手。廣中選手も同様のことを話してくれました。
「約1年ぶりのレースで不安もありましたが、心強いチームなのは私自身が一番よくわかっていました。それが、みんなで頑張るんだという気持ちにさせてくれました。故障中も、みんなが『待ってるよ』と声をかけてくれて、その言葉にとても励まされていました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです」(廣中選手)
鈴木選手と太田選手の二人のベテランは、感慨深く振り返ります。
「個人的には10度目の出場ですが、自分の力というより、まわりに支えられて気がついたら10回になっていたという感じです。最高の結果につながった、チームワークの勝利だと思います」(鈴木選手)
「亜由子さんから『行け――!』と、すごい勢いでたすきを渡されたので、『これはやるしかない』と腹が決まりました。みんなが走っている姿も見ていましたし、どんどん想いがたすきに乗って、いざ受け取ったときには『重いな』と感じました。ただただ、がむしゃらにゴールを目指しました」(太田選手)
太田選手は、6区で区間賞を獲得するとともに、今大会の最優秀選手賞にも選出されました。
髙橋監督は、次のように総評します。
「1区からアンカーまで、すべての選手がベストの走りをしてくれた結果が、優勝という形になりました。そのなかでも、5区、6区はベテランとしてのこれまでの経験がものをいったのかなと思います。
それまでつないでくれたたすきを受けて、初代キャプテン鈴木、前キャプテン太田がしっかりと走ってくれました。駅伝というのは流れが大事で、まさにチームが一丸となっての勝利です。これからもチームワークを大切にしていきたいと思います」(髙橋監督)
チーム創部10周年という節目の年に、見事、優勝という結果を残した日本郵政グループ女子陸上部「POSTIES」。個々の力に加えて、チームの「絆」が大きな後押しとなった勝利でもありました。
「つなぐプライド」を胸に、これからもPOSTIESは挑戦し続けていきます。
■日本郵政グループ女子上部 クイーンズ駅伝2024 結果
区間 |
氏名 |
記録 |
区間順位 |
チーム順位 |
---|---|---|---|---|
1区(7.0㎞) | 菅田 雅香 | 21分51秒 | 3位 | 3位 |
2区(4.2㎞) | 牛 佳慧 ※1、※2 | 13分08秒 | 2位 | 2位 |
3区(10.6㎞) | 廣中 璃梨佳 ※2 | 33分33秒 | 2位 | 2位 |
4区(3.6㎞) | カリバ・カロライン | 11分13秒 | 3位 | 1位 |
5区(10.0㎞) | 鈴木 亜由子 | 33分07秒 | 4位 | 1位 |
6区(6.795㎞) | 太田 琴菜 ※3 | 21分02秒 | 1位 | 1位 |
※1 牛選手が区間新記録
※2 牛選手、廣中選手がMIR賞(Most Impressive Runner賞)を各区間で受賞
※3 太田選手が区間賞、ならびに大会最優秀選手賞受賞
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