たびぽすと 「黄色いポスト」に始まる、ノスタルジアに浸る習志野旅

あなたに伝えたい旅路がある。

そこでしか見られない景色、そこでしか感じられないものを写真に収めながら旅を進めていく。四季の移り変わりや美しい自然のなかに佇むポストを目指す旅へ出発です。

今回の舞台は、千葉県の北西部に位置する習志野市。市内の習志野郵便局には、全国でも数少ない「黄色いポスト」があるそうです。都内から電車に揺られること約1時間、習志野郵便局がある京成津田沼駅に到着しました。

2つの郵便ポストが並ぶ、習志野郵便局

この日は快晴。まるで絵に描いたような習志野の青空を眺めながら、ぐんぐん北西へと進んでいきます。

足早に駅へと急ぐサラリーマン、自転車で軽やかに通学する男子学生、列車の接近を知らせる踏切の警報音――。京成津田沼駅は、たくさんの人や音で活気づいていました。

道端の花に見とれたり、街行く人々を眺めたり。そうして歩くこと約8分、「習志野郵便局」が見えてきました。

習志野郵便局に徐々に近づくと、目を引く鮮やかなその存在に気がつきました。地元の方々から親しまれる、黄色いポストがお出迎え。

黄色いポストは今では珍しくなった丸型で、趣を感じる佇まい。さらに、その横には赤色のポストの姿も。レトロな丸型ポストとおなじみの四角いポストが新旧そろって並ぶ様子は、なんだか頼もしくそして微笑ましく見えました。

まるで街の様子を見守ってくれているかのような黄色いポストの取集時刻は、隣の赤いポストと同じです。

しばらく眺めていたら、ふと一枚のはがきの存在を思い出しました。それは、友人が旅先で購入して、その日の思い出を綴って私宛てに送ってくれたもの。旅先で投函され、時間と場所を越えて私の手元に届いたそのはがきを読んだとき、まるで自分まで旅に出たかのような気持ちになったものです。そんなノスタルジアに心引かれ、習志野市での日帰り旅の思い出と、友人への感謝の気持ちをしたためたはがきを、一日の終わりに投函することにして旅を始めます。

スペシャルティコーヒーが香る爽やかな旅の始まり

旅の始まりは、一杯のコーヒーから。習志野郵便局から徒歩5分ほど。

かわいらしい木の看板が目印のここは、BROWN SOUND COFFEE。スペシャルティコーヒーが楽しめる地元の人々から愛されるカフェです。

もともとは酒屋兼たばこ屋だった空き物件を、初代オーナーが改装したというこちら。案内された席に腰かけてあたりを見回すと、どこか異国の雰囲気が漂います。

それもそのはず。内装は、初代オーナーが訪れたなかで一番くつろげたという、アメリカ西海岸のカフェをイメージしてデザインされたのだとか。ナチュラルなウッド調の家具などが海辺のカフェにいるかのような開放感を演出し、あっという間にリラックスした気持ちに包まれました。

こだわりの空間でいただくのは、気候などによって提供する豆を変えるという「本日のコーヒー」と、定番メニューの「あんバターサンド」。

ぽてっとしたフォルムがかわいらしいあんバターサンドは、あふれんばかりのクリームが目を引くボリューミーな一皿。さっそく一口いただいてみると、見た目とは裏腹にさっぱりとした口当たりでどんどん食べ進められる軽やかなおいしさ。ほっと一息つくのにぴったりです。

グアテマラ豆を使用した深煎りだというコーヒーは、コクがありつつもフルーティーな酸味を感じる本日の気候にぴったりな一杯で、あんバターサンドとの相性も抜群。口に広がるおいしさをかみしめながら、80年代アメリカの店内BGMに耳を傾ける......。そんなゆったりとした時間は、よい一日になる"予感"を運んでくれました。誰かにはがきを書く予定があると、そんな何気ないことにも目を向けられるようになるのかもしれません。

「アイーン狛犬」に月ごと替わる御朱印。懐かしさに浸る、菊田神社

続いて向かうのは、平安時代に創建された歴史深い菊田神社。

道中出合った景色たち。習志野市には至るところに緑があり、角を曲がるたびに違った景色に出合うことができました。青々とした植物たちや、道端で笑い合う地元の方々を眺めながらゆっくりと進んでいくと、あっという間に立派な鳥居を構えた菊田神社に到着です。

美しい鳥居をうっとりと眺め、境内へ。菊田神社には初めて訪れたにもかかわらず、いつの日か感じたことのある懐かしさや温もりがあります。菊田神社の長い歴史と、地元の人々から愛され続けてきた空気感が、それらを生み出しているのかもしれません。

揺れる木漏れ日を眺めながら手水舎へ向かうと、途中、かわいらしい狛犬が出迎えてくれました。

通称「アイーン狛犬」と呼ばれるこちらの狛犬像は、ニコッと笑っているような表情から、いつの間にかそんな呼び名が定着したそう。この日もお参りに訪れた方々が思い思いに写真にその姿を収めていました。

ゆっくりとお参りを済ませ、社務所へ向かいます。実はここ菊田神社には、アイーン狛犬のほかに、もう一つ有名なものがあるそう。

それは、アイーン狛犬が描かれた御朱印帳と、月ごとに替わる彩り鮮やかな御朱印。さっそくピンクの御朱印帳に、今月の御朱印をいただきます。

狛犬と菊の御朱印は、絵柄のかわいさもさることながら、その美しい配色についつい見入ってしまいました。続いてはおみくじを引くことに。朝感じた"予感"を胸に、おみくじ箱に手を伸ばします。

その運勢は......?

見事「大吉」を引き当てました。「はがきで友人にも伝えなきゃ」、そう思うとよりうれしくなるものです。清らかな気持ちで一礼し、菊田神社を後にします。

地元からも県外からも愛されて100周年のレストラン

せっかく習志野市に来たのなら、ぜひ訪れたい洋食屋さん。2024年8月に創業100周年を迎えた、レストランあけぼのです。

現在の店長で3代目だというレストランあけぼのは店舗の建て替え工事を行い、2022年にリニューアルオープンを果たしました。

目移りしてしまうほどのメニューがあるなか、今回は"大人のお子さまランチ"と呼ばれる「デラックスプレート」をいただくことに。

人気メニュー「オムライス」をはじめ、「デミグラスハンバーグ」、「ナポリタン」、「大エビフライ」がぜいたくに盛り付けられ、"子どものころ夢見たメニューがすべてのっている一皿"に胸を高鳴らせながら、オムライスをパクリ。

見た目以上にふわふわトロトロな卵の秘訣はその作り方にあるそう。ケチャップライスもどこか懐かしさを感じる味わいで、卵とのハーモニーが絶妙です。

懐かしい味に胸もお腹も満たされたところで、今日一日の思い出を回想し、はがきにしたためていきましょう。

よく晴れた日で気持ちよかったこと。「黄色いポスト」の前ではがきを書くことを思い立ったこと。街の人々が穏やかだったこと。菊田神社で大吉を引き当てたこと。そして、相手への日ごろの感謝の気持ち......。こうして書いてみると一日の思い出がより鮮明なものになるうえに、温かな気持ちが自然と湧いてきて、スマートフォンでのやり取りでは伝えることをためらってしまうような言葉も素直に書くことができました。

いよいよはがきを投函すべく、「黄色いポスト」を目指します。

黄色いポストに"幸せな気持ち"もいっしょに投函

夕暮れの気配がすぐそこまで訪れた頃、習志野郵便局へ戻ってきました。変わらず穏やかな佇まいの黄色いポストです。

改めてじっくりと見てみると、朝の清々しい印象ともまた違った魅力を感じます。夕日に照らされてオレンジがかった黄色いポストには、フォトジェニックな雰囲気が漂っていました。

メールやSNSが普及した今、なかなか書く機会が少なくなった「はがき」や「手紙」。改めてはがきを書いてみると、そのよさに気がつきました。やはり、送る側は普段言えないような素直な気持ちを書けたり、相手のことをゆっくり思い出す機会になったり。受け取る側は手元に届いたらその場の"空気"まで感じ取れたり、カタチとしてずっと手元に残せたり......。そんな「温かさ」を感じられるのが、はがき、手紙の大きな魅力の一つでしょう。

さらに、「黄色いポスト」に投函すれば、"幸せな気持ち"もいっしょに送ることができる気がして、こちらまでうれしくなりました。ぜひみなさんも、大切な相手への手紙を黄色いポストに投函してみてはいかがでしょうか。



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