日本郵政グループが高校生に向けて特別授業! サステナビリティの時代における「手紙文化」の価値とは?
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持続可能な社会の実現に向けたさまざまな取り組みを行っている日本郵政グループでは、2021年度よりSDGsの取り組みに力を入れている東京都立千早高等学校(以下、千早高校)と連携施策を行っています。そして2022年度も引き続き、サステナビリティに関する連携した取り組みを継続していくこととなりました。この記事では2022年7月13日に、千早高校の2年生、約200名を対象として行われた実践授業の模様をレポートします。
150年前からSDGsを考えていた!? 郵便事業の創始者・前島密の理念を受け継ぐ日本郵政グループ
授業には、日本郵政グループから5名が講師として参加しました。
日本全国、すべての市町村に存在する郵便局では、郵便や銀行業務にとどまらず、各地域に根差した、さまざまな地域貢献活動が行われています。千早高校との取り組みも、南雲さんをはじめとした東京都豊島区の各郵便局の地域貢献活動の一環でスタートしたプロジェクトです。ビジネス教育に力を入れ、さまざまな企業や地方自治体と連携をした取り組みを行っている千早高校の話を耳にし、連携を申し入れ、実現しました。
これまでも「郵便局におけるSDGs」について考える授業や、千早高校の生徒約20名を本社に招いての日本郵政株式会社 増田 寬也(ますだ ひろや)社長との意見交換イベントを実施。高校生たちからのプレゼンテーションの模様は日本郵政グループから発刊された『SDGs Book』にも掲載されました。
關さんは、明治時代に日本の郵便の仕組みを築いた前島 密(まえじま ひそか)の言葉「縁の下の力持ちになることを厭うな。人のためによかれと願う心を常に持てよ」という言葉を紹介し、SDGsの理念である「誰一人取り残さない」という精神に通じるものがあると説明しました。
150年前に掲げたSDGsに近い理念を受け継ぐ日本郵政グループ。新たな社会課題に直面するなかで、現在SDGs達成に向けて取り組んでいるのが「手紙文化の継承」と「環境負荷の軽減」。後者の事例として、授業では「FSC認証※1を受けた環境に優しい郵便はがき」「インクカートリッジや使用済み鉛筆の回収」「ふるさと小包のエシカル商品※2」が紹介されました。
※1 FSC®認証とは、適切に管理された森林と、そこから生産された林産物、再生資源、そのほかの管理された供給源からの原材料で作られた製品を識別する、国際的な森林認証制度のこと。FSC®認証紙を採用するということは、世界の森林の保全と持続可能な利用を促進することにつながります。
※2エシカルとは、環境にも、人にも、社会にもやさしい取り組みのことです。「ふるさと小包のエシカル商品」とは、フードロスの削減にもつながる規格外商品・「わけあり」商品や、生産から配送までで排出されるCO2をオフセット(埋め合わせ)する商品を指します。
今回の千早高校のみならず、自治体や企業、生産者など、さまざまな人たちと連携しながら行われている日本郵政グループのSDGsへの活動。
關:一連のSDGsへの活動で日本郵政グループが大切にしているのは、「想いを共有すること、想いでつながっていくこと」です。
手紙は「想い」の伝わるコミュニケーション手段
吉田さんは、人と人とのご縁や人脈、仕事相手からの信頼の積み重ねがビジネスにおいてとても大切であるという、かつて秘書業務に携わっていた際の自身の経験を語りました。
そしてコミュニケーションの手段として、吉田さんが高校生たちにおすすめするのが、手紙やはがき。メールなどに比べると手間はかかるものの、手書きであるがゆえに相手に強く印象付けられます。そして相手のことを想いながら『想い』をしたためるという行為自体が、究極の大人のたしなみであると吉田さんは言います。
最後に、過去に吉田さんが受け取った心に残る絵手紙を紹介しました。
続いて講師を担当するのは、日本郵便株式会社の切手デザイナー 玉木 明(たまき あきら)さん。玉木さんは「切手に込めた想い」と題して、実際にご自身がデザインされた切手の原画を生徒たちに見せながら、一つの切手をデザインするまでの思考の流れを解説しました。
題材となったのは「ボーイスカウト日本連盟創立100周年」の切手。玉木さんはデザインをする上で、「ボーイスカウトってそもそもなんだろう?」という疑問を解決するために、実際にボーイスカウトのキャンプに参加されたそうです。
玉木さんは、人に何かを伝えるために大切なのは「手触り」であり、その「手触り」を得るために何が必要か、それは「実際に体験してみること」だと言います。体感すると言葉では言い表せない「リアリティ」が生まれます。玉木さんがボーイスカウトの切手をデザインするために、実際にキャンプに足を運んだものもそのためであり、そしてまた、手紙を書くという行為も「手触り」のある体験であると説明し、手紙文化の魅力についても語りました。
最後に登壇した日本郵便株式会社豊島長崎六郵便局長の西原 直希(にしはら なおき)さんは、生徒たちに「相手に想いを伝える絵手紙を書いてみよう」と夏休みの宿題を出しました。
西原:今日の授業をきっかけに、高校生が地域の郵便局や手紙という文化に対して、身近なイメージを持ってくれたらうれしいですね。
千早高校の生徒の皆さんにも授業の感想を聞いてみました。
自分が通う千早高校が、日本郵政グループとこんなに連携しているんだと知ってびっくりした
日本郵政グループというと郵便の会社というイメージがあるけど、企業や生産者さんとの連携など、さまざまな取り組みを行われていると知ってすごいと思った
手紙は手元に残って後で何回も読み返せるから、もっと子どもたちにも手紙文化が広がってほしいと思った
といった感想が寄せられました。
企業と高校生のコラボで答えのない課題に挑む
──今回の生徒さんたちの反応についてどのように感じましたか。
小塩:本校は「ビジネス教育」を一つの柱に掲げていまして、実学を大事にしています。実社会でも役立つ能力を養うため、授業のなかで生徒たちがプレゼンテーションを行うこともあります。そういう意味では、例えば今回の授業のなかで切手デザイナー 玉木さんの伝えるための技術というお話がありましたが、生徒たちには参考になったんじゃないかと思います。
──昨年からの日本郵政との連携施策の意義についてどのようにお考えですか。
小塩:ビジネス教育は本校の特色でもあるため、今回のように外部の方々とコラボレーションにより学びの機会が得られるのは、本当にありがたいことだと思っています。特に「SDGs」というのは答えのない世界であり、自ら課題を見つけ解決に取り組んでいくような、まさに「0から1を生み出す」という発想がなければ前進していかないものだと私は思うんですね。だからこそ一層、日本郵政グループの皆さんと一緒になって、「実学」という形で「0から1を生み出す」ことを学べるのは、生徒たちにとって貴重な体験だと感じています。
──ご自身の担当された授業で生徒さんたちに伝えたかった想い、そして授業に対する生徒さんの反応をどのように感じられましたか。
南雲:私のパートでは、地域の大切さ、手紙は文化だという想いをお伝えさせていただきました。授業全体を通して、生徒の皆さんからは熱意を感じることができましたね。
關:私が伝えたかったのは、どんな取り組みでも、想いを共有していく人たちがつながっていくことが大事だということ。そういう意味では今日の授業も、SDGsの視点から、「環境負荷の軽減」、「手紙文化の継承」という想いを共有した講師たちが、互いに連携しながら、多様な切り口で授業ができたことはよかったと思います。
吉田:私自身、本当にいろいろ出会いやご縁があって、それによって仕事が成り立っているという実感があったものですから、そういった想いを実体験に基づいてお話しさせていただきました。
玉木:私は「伝える」というテーマでお話しさせていただきました。ずっと一緒にいる家族間ですらミスコミュニケーションは発生しますし、伝えることってすごく難しい。だから今日の授業もどうやったら生徒たちに伝わるだろうと、原画を使ったり、スライドを工夫したりするなど、試行錯誤をしました。難しくも、私自身とても勉強になる時間でした。
西原:私は、地域の郵便局と千早高校さんをつなぐ役割を担当しておりますが、今日の授業に関しては、講師の皆さんの頑張りもあって、生徒の皆さんに伝わったという手ごたえを感じました。SDGsに関しては、むしろ高校生たちの方もしっかり考えているので、我々もともに学び、一緒に切磋琢磨していければと思います。
──授業のテーマについて、今後の展開をお聞かせいただけますか。
南雲:昨年、千早高校の生徒さんを本社に招いて日本郵政グループのSDGsについてディスカッションをしたときに、「ペーパーレス化」という提案がありました。環境負荷軽減のため不要な紙を減らすことはもちろん大事ですし、一方で本や手紙など紙媒体のよさというものもあります。メールやメッセージでのやりとりが当たり前になるなかで、今回は「手紙文化」について生徒さんに触れていただきたいと思い、授業のテーマに選びました。
關:来年の授業はまた全然違う内容になると思います。「ペーパーレス化」という問題提起から始まった今回の授業のように、千早高校の皆さんと連携していくなかで、また新しい課題やテーマが出てくるはずです。高校生たちと意見交換しながら内容を決めていきたいですね。今からとても楽しみです。
※一部、撮影時のみマスクを外しています。