エモい郵便局図鑑 No.0005 中京郵便局(京都府)

1871年、「日本近代郵便の父」と呼ばれる前島 密(まえじま ひそか)によって郵便事業は開始されました。それから時は流れて150年経った現代、日本各地には激動の時代を見守ってきた郵便局が今でも残っています。ある人はそんな歴史ある郵便局を、畏敬の念をこめて「エモい郵便局」と言うんだとか――。

ここでは、郵便局のノスタルジックな魅力に取りつかれたフォトグラファー・ライターが日本各地の「エモい郵便局」を紹介していきます。

■場所
四季折々の姿を見せる鴨川・三条大橋から徒歩圏。観光スポットからのアクセスも良い、京都・三条通り
(京都府京都市中京区三条通東洞院東入菱屋町30)

■開局
1949年 (※前身となる西京郵便局時代を「開局」とした場合1871年)

■概要
ネオルネサンス様式の美しい外観はファサード保存と呼ばれる建築手法によって現代まで継承され、局舎は京都市登録有形文化財として「景観重要建築物」に指定されている

■歴史
近代郵便制度の創設と同時に西京郵便役所として開設され、1949年に現在の中京郵便局へと名称を変更した。京都中央郵便局が開局されるまで、中京郵便局が中央局として稼働し、前身を含めて150年近い歴史を持つ。
1974年に一度建て替えに伴う局舎の取り壊しが決定されるが、地域住民や建築の専門家による反対運動もあり、ファサード保存による改築がなされた。ファサード保存における日本の実施例は中京郵便局が初。

■名物
一目で郵便局とは思えない美しい赤レンガ造りの局舎。その外観の美しさは幅広い層に支持され、観光客や写真愛好家が立ち止まって写真を撮る風景が日常的にみられる

■交通アクセス
京都市営地下鉄「烏丸御池」駅より徒歩3分と好アクセス。京阪「三条」駅からは徒歩15分程度で、三条通りを西へ進み、京都文化博物館を抜け到着

アパレル・雑貨・お菓子のお店や喫茶店、博物館など、その土地で働く方々や観光客によって賑わいを見せる京都・三条通り。

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その一角に構える赤レンガ造りの建物が、中京郵便局である。

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歴史は古く、建設されたのはおよそ120年前のこと。ネオルネサンス様式の美しい外観は今も観光客の心をつかんでおり、記念に写真を撮られる方も多いそうだ。

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その価値は京都市登録有形文化財として「景観重要建築物」にも指定されるほど。また、現在は使用されていないが、「正面入口」の階段と扉は、馬車が使われていた当時のまま残されており、歴史に想いを馳せることができる。

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正面玄関。階段が高く重厚感があるのは、馬車が使われていた当時に使いやすい仕様だったという。

「日中はもちろん、夜間には街灯が局舎を照らす様子がレトロな雰囲気を醸し出していて、その雰囲気のよさに足を止める方も多いんです。近くには中京郵便局と同様に歴史ある建物が並んでいますが、街のランドマークになるような局舎で働けていることを、私自身とても誇りに思っています。そんな歴史ある建物ですが、実は一度取り壊しが決定されたこともあるんです。」

そう話すのは、2020年に中京郵便局に赴任した水田 亜以(みずた あい)さん。

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1974年に一度は建て替えに伴う取り壊しが決定したが、地域住民や建築業界からの反対運動があり、見た目はそのまま中身だけを建て替える手法が取られたそう。これを「ファサード保存」と言い、日本で初めて実施された例として評価されている。

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「そのような経緯もあってか、中京郵便局には『2階が2つ』あるんです。少し説明するのが難しいのですが、この建物には旧館と新館が階段を挟む形でつながっていて、旧館が建てられた時代と新館を増設した時代の『天井の高さの基準』が違ったので、同じ建物に天井の高さが違う2階や3階があるんです。新しく赴任された方は、『どっちの2階だっけ?』と迷われますね(笑)利用者の方には見えづらいところにも、実は局舎の個性があるんです。」(水田さん)

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局舎の特徴や歴史は、入口左手にある「壁面博物館」と呼ばれる展示スペースで誰でも閲覧することができる。

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また、普段は公開されていない屋上に上がると、当時から使われている瓦屋根が今も変わらず局舎を守り続けている様子が見られた。そして、屋上からつながる倉庫には建て替え当時に回収された建具が、今もひっそりと保存されている。
「今年は祇園祭も開催され、観光客も例年に近い数の方がいらっしゃいました。建物の歴史について聞きに来られる方はもちろん、局舎が目立つので道を訪ねに窓口へ足を運ばれる方もいます。そういった方に向けて、周辺環境や局舎の歴史についていつでもご案内できるように心がけています。また、地域にお住いの方から近隣の会社・店舗にお勤めの方まで、毎日顔を合わせる方も多く、中京郵便局が多くの方に愛され、役に立てていることはうれしいです。利用される皆様の拠り所として、これからも郵便局を守っていきたいです。」(水田さん)

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歴史を感じる厳かな外観ではあるが、中京郵便局はあたたかな空気に包まれていた。

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中京郵便局
水田 亜以さん
2020年から中京郵便局で勤務。

※撮影時のみマスクを外しています

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