エモい郵便局図鑑  No.0002 旧殿居郵便局(山口県)

1871年、「日本近代郵便の父」と呼ばれる前島密(まえじま ひそか)によって郵便事業は開始されました。それから時は流れて150年経った現代、日本各地には激動の時代を見守ってきた郵便局が今でもひっそり残っています。ある人はそんな歴史ある郵便局を、畏敬の念をこめて「エモい郵便局」と言うんだとか――。

ここでは、郵便局のノスタルジックな魅力に取りつかれたフォトグラファー・ライターが日本各地の「エモい郵便局」を紹介していきます。

■場所
畑が広がるのどかな田舎道沿い、現殿居郵便局の隣
(山口県下関市豊田町殿居1111-2)

■開局
1902年

■概要
1923年に現在の姿に改築。1977年に山口県有形文化財に指定

■歴史
ゴシック様式の建築に興味を持っていた二代目局長・河田寛(かわた ひろし)が、1923年に改築した局舎。山口県最古の木造局舎とされている。1991年に起こった台風19号で、倒壊した尖塔部分から棟札が発見された。この棟札も、1993年に山口県有形文化財に追加指定されている

■名物
レトロな雰囲気漂う八角搭屋。八角搭屋は2階建てになっており、2階部分からは美しい田園風景が望める

■交通アクセス
JR滝部駅下車後、ブルーライン交通に乗り換え。25分ほどのどかな田園風景を楽しんだ後、殿居駅下車後徒歩約2分、ミントグリーン色の洋館が旧殿居郵便局

下関駅から車で移動すること約1時間、瓦屋根の日本家屋がポツポツと建つ田園風景のなかを走っていると、突然淡いミントグリーン色が映えるレトロな洋風建築が現れる。それが旧殿居郵便局だ。

1981年に新局舎(旧殿居郵便局の隣に建つ殿居郵便局)を建築したことに伴い、明治から昭和の終わりにかけて、長い間地域の郵便を支え続けたその歴史に幕を閉じた。

閉局後の現在も、隣の殿居郵便局に声をかければ外観のみでなく、内部の見学も可能だそう。

局舎内外に、まだ現役で営業していた当時を思わせるレトロなインテリアや建具、道具、書籍などがそのまま置かれている。

当時の郵便局員とお客さまがやりとりしていたであろう窓口は、アクリル板で仕切られている。そこには、レトロなフォントで業務内容が記されている。見かけなくなって久しい「電報」や「電話」業務も見られた。

以前は事務室として使用されていた窓口の裏には、展示物や書籍、そして棟札が飾られている。この棟札、1991年に起こった台風19号によって局舎の尖塔が倒壊し、落下した部分から発見されたという。1981年に幕を閉じ、保存されたはずの局舎から時を経て偶然発見された棟札。歴史が長い郵便局だからこそ起こった、時間が仕掛けたいたずらなのかもしれない。

このほかにも、当時電話交換室として利用されていた部屋にはアンティーク調の椅子や格子窓が、この局舎の特徴の一つである八角搭屋の2階には、アンティーク調のランプやカーペットがレトロでなんだか懐かしい雰囲気を醸し出していた。

まるで昭和初期にタイムスリップしたかのようなこの数々の幻想的な空間を目当てに、撮影に訪れる観光客も多いという。個人での撮影のほか、イベントや展示スペースとして局舎を利用することも可能なのだそうだ。

局舎の近隣には、一ノ俣桜公園や一ノ俣温泉といった観光名所もある。特に一ノ俣桜公園は、水没林の周りを鯉が泳ぐ神秘的な絶景を楽しめる場所として地元では人気のスポットなのだそう。

昼は旧殿居郵便局で柔らかい木漏れ日のなか撮影を楽しみ、日が暮れ始めたら一ノ俣桜公園の青く光る幻想的な池をカメラに収める。この地が、人気の撮影スポットとなる日も近いかもしれない。

フォトグラファー:金本凜太朗

ライター:仲奈々

企画・制作:CURBON

エモい郵便局図鑑 No.0001 上恩方郵便局(東京都)

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