たびぽすと 銚子電鉄で行く、よりみち写真旅。犬吠埼の灯台横に佇む《白いポスト》

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あなたに伝えたい旅路がある。


そこでしか見られない景色、そこでしか感じられないものをフォトグラファーの視点で、写真に収めながら旅を進めていく。四季の移り変わりや美しい自然のなかにたたずむポストを目指す旅へ出発です。

旅好きフォトグラファーの相沢 亮(あいざわ りょう)です。

普段から旅が好き過ぎて、月の半分は全国さまざまな場所に行き、風景の写真を撮っています。

日本で日の出が一番早く見られる場所(※1)。銚子の犬吠埼の灯台に行ってきました。そこには珍しい「白いポスト」があるとのことです。前から乗りたかった銚子電鉄に乗って、白いポストを目指します。

Day1 AM9:00 銚子駅到着、銚子電鉄の旅のはじまり

「絶対にあきらめない銚子電鉄」に強い意志を感じる

旅のはじまりは銚子駅から。


電車を乗り継いで、今回の旅のスタート地点である銚子駅に到着しました。ここから銚子電鉄に乗り換えていざ出発です。


今日はいろんな駅に途中下車をしながら写真を撮りたいので、1日乗車券「弧廻手形」を購入。銚子から外川間の全線を1日乗り降りできる乗車券です。見せるとサービスもいろいろ付いてきます。


銚子駅始発で犬吠方面への次の電車は9時17分。


少し時間があったので散策していると売店のスタッフに「これが一番おいしいわよ!」とぴーなっつ最中を薦められたので素直に購入。たしかにおいしかったです。旅先ではこうやって流れに身を任せてみるのもいいですよね。

弧廻手形の裏面には、鉄道むすめこと外川つくしさんのお姿が。とってもかわいい。

AM9:19 仲ノ町駅下車 時間の流れが止まったような趣を感じる駅

銚子駅の隣、仲ノ町駅に下車しました。

仲ノ町駅舎なんですが、とにかく内観、外観がまたしてもレトロ。ここだけ昭和から時間が止まっているんじゃないかと錯覚しそうになります。

出札口、ガチャガチャ、ショーケース、光の入り方、そこかしこにノスタルジックな雰囲気が漂っていて、心落ち着く空間でした。

どこを切り取っても絵になるので、ついついたくさん写真を撮ってしまいました。こういった場所には長い時間のなかで、流れていった時代と人の記憶が残って、とどまっているような気がします。

AM10:26 森の中に静かに佇むような本銚子駅

「上り調子 本調子 本銚子駅」

聞いてもわかるようにとってもご利益がありそうな名前ですよね。もちろん銚子電鉄の方々がこの名前を見逃さないわけがありません。受験シーズンになると合格祈願の切符が発売されるそうです。


本銚子発→銚子行きは【上り銚子ゆき】

銚子発→本銚子行きは【本銚子ゆき】

オンラインショップでも買えるのでゲン担ぎしたい方はぜひ参考にしてみてください。

本銚子駅は、個人的に楽しみにしていた場所でもあります。

木漏れ日がきれいに入る木造の駅には写真を撮りたくなるポイントがたくさんあります。古いベンチがあったり、建具の木の雰囲気とかも、年月がたたないと出せないものですよね。

そして心温まったのがこのノート。駅を利用した方々の温かいメッセージが何冊にもつづられていて、思わず読み込んでしまいました。1913(大正2)年に建設され、100年もの歴史があるという本銚子駅。このノートには駅舎の紡いだ記憶と記録が記されているのだなと感じました。

AM11:32 君ヶ浜駅到着。見えてきた関東の最東端、太平洋との出会い

電車に揺られて、本銚子駅から4駅、君ヶ浜駅に到着。太平洋の見える君ヶ浜しおさい公園の最寄り駅です。関東の最東端にいよいよ近づいてきました。

君ヶ浜駅から歩くこと約5分、途中森のなかを抜けると、そこには海が広がっていました。

砂浜が広がり、風と波の音や空気が感じられる場所。


犬と散歩している方々や釣りをしている方々などがいて、今回の旅の目的地の灯台が見えてきました。


君ヶ浜駅まで戻るか、徒歩で犬吠埼灯台に向かうか迷いましたが、海岸沿いを歩くのがよいなと思い、徒歩で向かうことを決めました。


風を遮るものがないからか波が高く感じられ、この荒々しい雰囲気が関東の最東端に来ているぞという気持ちを強めます。もう冒険ですね。

PM0:20過ぎ 幸せの白いポスト、犬吠埼灯台に到着

君ヶ浜から徒歩約20分(約1.6km)、急傾斜の崖を登るような階段を上がっていくと犬吠埼灯台がついに目の前に現れました。朝から電車を乗り継いで、歩いて、ついに到着です。

灯台の足元にはお目当ての「白いポスト」がありました。訪れた日が快晴ということもあって、白と青のコントラストが気持ちいい。


このポストは2012年の3月14日のホワイトデーの日から利用が開始されました。当初、レトロな赤い丸型のポストにする予定だったそうですが、銚子海上保安部の方から「灯台に合わせ白にしてみては」と提案があったことから、白色に決まったそうです。


私が撮影に行ったタイミングでも、小さい子からご年配の方まで白いポストの写真を撮っていて、なかには手紙を投かんしている方もいました。


ホワイトデーにちなんで「恋愛が成就するポスト」と言われていたり、「願いがかなうポスト」とも言われていたりするので、もし犬吠埼の灯台に行く機会があれば手紙を出してみたらよいことが起こるかもしれませんね。

眩しいほど真っ白なポスト

そして犬吠埼の灯台は全国でも16基しかない、登れる灯台です。

もちろんここまでわざわざ来ましたからには登ります。灯台の内部は、99段の螺旋階段があります。登り切った後の踊り場から眼下に広がる開放的で雄大な太平洋の景色。まさに絶景です。

階段を登り切った後の達成感と相まって、冒険者のような感覚です。ついにここまで来たか。

お腹が減ってきたので犬吠テラステラスで昼食タイム。朝からずっと動いていたので、ハンモックで少しだけ休憩をします。まだまだ撮りたい景色がたくさんあるのでここで体力回復です。

PM3:32 銚子電鉄の終着駅(外川駅)到着。海岸の絶壁、屏風ヶ浦の夕日

時間で気付いた方もいるかと思うのですが、冬の時期に夕日を見るとしたらあと約1時間しか余裕がありません。

とにかく、すぐにでも夕日がきれいに撮れるポイントに向けて移動しなければならないのですが、下車した外川駅のノスタルジーな空気感に僕のシャッターを押す手が止まらなくなってしまいました。時間がないのにここから移動ができない!!


赤いポストと木造の駅舎の醸し出す雰囲気が素敵すぎました。

西日に古い車両も映えます。

この写真だけ見るといつの時代に撮ったものかわからなくなっちゃいますね。

名残惜しい......、ずっとここで撮っていたい気持ちもありますがタイムリミットです。

最終手段のタクシーもあるのですが、冒険という気持ちを忘れないためにも徒歩で向かうことに。

距離は約4km、徒歩約30分という道のりです。寄り道をしている暇もなく、とにかく歩き、やっと半分。


途中から走ったおかげで、16時12分ごろにどうにか屏風ヶ浦付近の銚子マリーナ海水浴場に到着。砂浜、海面に映り込む夕日が綺麗でした。ここで何枚か写真を撮って、屏風ヶ浦を目指します。

16時17分、屏風ヶ浦遊歩道にやっと着きました。

この迫力......、海外のようなスケール、壮大な景色です。


屏風ヶ浦は、銚子市から旭市までの太平洋海岸線に連なる海食崖の景勝地です。2016年3月に国の名勝、天然記念物に指定されたのですが、房総の魅力500選にも選定されています。 その景観がドーバー海峡にあるホワイト・クリフに似ていることから【東洋のドーバー】とも呼ばれています。

断崖絶壁とはまさにこのことで、波の浸食が作り出した崖、夕焼け色に染まる地層、大地に感動しました。

途中、夕日を眺めながらドラマチックな雰囲気を纏う猫に出会いました。

幸運にもこの日は雲ひとつない快晴のなか、水平線上に沈む夕日を眺められました。

半円の夕日。海の向こうに何も遮るものがない。まさに東の端に来たのだなと改めて実感しました。


夕日が沈み切るのを見届け、ホテルへと向かいます。

もちろん、駅までは徒歩で。

Day2 AM5:30 日本で一番早い日の出(※1)が彩る白い郵便ポストと犬吠埼灯台

日の出時間は、6時20分ごろ。着いたころには、東の空が徐々に明るくなっていました。明け方、空のだいだい色と紺色が交わる時間帯。

日本の平地で一番早く日の出を見られる場所(※1)。

きれいな地球影(※2)とビーナスベルト(※3)。冬の澄みきった空気のなかで、日の出の時間を迎えます。

太平洋に昇る朝日。

朝日に照らされた白い灯台がだいだい色に染まって行きます。僕しかいなかったので、さざ波と風の音だけがしていました。

白い郵便ポスト、海に反射する朝焼け、澄み渡った青空。ため息が漏れるほど美しいコントラストの風景をカメラに収められたので、今回の旅は終了。

終わりに

犬吠埼灯台の白いポストを目指す旅は、関東の最東端を目指すということで途中から冒険をしているような気分でした。


灯台の色に合わせた白いポスト、海と空の色に映えて、本当にすてきな場所です。

朝、昼、夕、どの時間帯も違った風景が楽しめるので、カメラを片手に訪れてみてはいかがでしょうか。

フォトグラファー/ライター:相沢 亮

編集:5歳

企画・制作:CURBON

フォトグラファー/ライター

相沢 亮 (あいざわ りょう)

早稲田大学大学院中退後の2017年にカメラに出逢い、2020年より東京を拠点にフリーランスフォトグラファーとして活動中。メーカーとのタイアップ記事、企業案件や広告撮影、雑誌への寄稿・執筆等、活動の幅を広げる。近年、地方創生や観光PRに力を入れる。2021年2月に写真家としてのインタビュー記事が朝日新聞WEBメディア「withnews」およびYahoo! JAPANで公開される。
2022年、春に単著出版予定。

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たびぽすと 絶景フォトスポットをめぐる伊勢の旅。
たびぽすと 写真家・岩倉 しおり さんと歩く小豆島

(※1)冬期において、山頂・離島を除き北海道・本州・四国・九州の平地で日の出が一番早く見られる場所

(※2)日の出前に太陽とは反対側の空に地球の影が映し出される現象のこと

(※3)日の出前に太陽と反対側の空にピンク色の帯が見られる現象のこと

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